産経新聞のトークライブ詳報記事について効果的に考える

日本の移民国家化を防ぐために

 問題になっていたトークライブについては、『正論2014年09月号』に「憂国のトークライブ詳報 日本を移民国家にしてよいのか」として掲載されています。その中に、産経新聞論説委員である河合雅司氏が、移民問題における産経新聞の立場を説明している箇所がありましたので引用します。

 産経新聞がこの問題をどう考えているのかを紹介します。弊紙は四月五日と六月十三日に「主張」欄で取り上げました。要点は、外国人を全く受け入れないとの立場は取らない。ただ、国民的議論もなく、なし崩しに単純労働者を大量に受け入れるのは認められない。ましてや、「移民ありき」で議論を進めることは厳に慎むべきだ―という立場です。

 この説明および今回の産経新聞記事から判断すると、産経新聞は移民反対派というより移民慎重派のようです。もちろん、産経新聞ほどの巨大メディアになれば、社員間の意見の相違もあるでしょうし、スポンサーの意向もあるでしょう。ですから、産経新聞が一枚岩だと考えることは危険です。移民賛成派の動きなども考慮しておくべきでしょう。今回の記事は、移民賛成派への牽制になりますし、実際に移民推進を利する記事が出てきたときの対抗手段にもなります。
 また、他の新聞社で移民政策に関する報道があったときにも利用できます。他の新聞社が移民反対であれば理論が補強されますし、移民推進であれば今回の記事と比較することができます。三橋貴明氏の『移民亡国論』などからも明らかですが、移民を推進するための理論は公的には破綻しています。まともな議論が展開されれば、理論的には移民反対派の筋が通っていることは明らかになります。移民の危険性を説いている産経新聞の記事の誠実さに比べ、XX新聞の移民推進論は不誠実だと言うこともできるわけです。そういった観点から、今回の記事は産経新聞にとってもメリットのあるものになったと言えるでしょう。

移民問題は国家意識の問題

 『関岡英之氏と産経新聞の一連の対立について公論を擁護する』において、「先方から誠実な回答があれば、敵対する理由はなくなります。そのときは、共に日本の言論を盛り上げていければと考えています」と述べていました。
 現政権の政策は、日本の移民国家化を推し進める危険な代物に見えてしまいます。日本が移民国家になってしまうことを防ぐために、利用できるものは利用し、協力できるところは協力していく必要があります。
 移民問題は、今後も予断を許しません。外国人移民を受け入れた場合、短期的には一部の者たちに利益をもたらすでしょう。長期的には、ほとんどの日本人に不利益をもたらすでしょう。国家意識を喪失し、短期的な利益を追求することに喜びを見出す者たちは、移民を推進してくる可能性があります。多少なりとも日本のことを考え、後の世代のことを考慮に入れて生きている日本人は、移民反対派になることでしょう。
 私は自分勝手な人間ですが、ちょっとくらいは後の世代のことも考えているので、移民推進を企んでいるような人たちとは袂を分かつことになります。移民問題は、日本という国家をどのように考えているかによって意見が分かれます。日本人の国家意識が問われているのです。

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西部邁

木下元文

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投稿者プロフィール

1981年生。会社員。
立命館大学 情報システム学専攻(修士課程)卒業。
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