皆様すでにご存知のことだと思いますが、関岡英之氏の連載(6)からはじまった一連の記事によって、正論および産経新聞の報道姿勢に疑義が呈されました。
【第6回 「移民問題トークライブ」に関わる産経新聞本社の不可解な対応をすべて暴露】
【第7回 フジサンケイグループ報道機関の情報操作を暴露する】
【第8回 愚かで危険な「外国人=被害者論」】
既存メディアへの不信
産経新聞への不信という観点からは、まず私の頭には2003年のイラク戦争を巡る言説が浮かびます。この戦争の大義をめぐり、親米保守VS反米保守という保守派の対立がありました。開戦後に大量破壊兵器が発見されなかったことからも、親米保守=似非保守であり、反米保守=真正保守ということが判明したわけです。そのため産経新聞は、アメリカの覇権的先制攻撃、つまりは侵略戦争に加担したという汚点を残しているのです。
このとき日本の自尊自立という立場から、イラク戦争を侵略戦争だと批判した代表的な人物としては、小林よしのりさんと西部邁さんを挙げることができます。雑誌レベルとしては、小林よしのりさんが責任編集長を務める『わしズム』と、西部邁さんが主宰していた『発言者』(現在は後継誌『表現者』が出ています)のメンバーが多勢に無勢ながらも真摯な言論を展開していたのです。
当時の私は大学生でしたが、その孤軍奮闘ぶりに胸を熱くしたものです。逆に、産経新聞を含めた他のマスメディアへは不信感ばかりが募ったのです。
今回の一連の出来事において、そのときのことが私の頭をよぎりました。大手メディアの不誠実な態度に対し孤軍奮闘できるか否か、それは思想をしようとする者にとって、決定的に大事なことだと思われるのです。
報道のあり方に関する3つの問題点
正論および産経新聞の報道姿勢から、ここでは大きく分けて次の問題を挙げることができます。
(Ⅰ)誠実な知識人の言論生命が危機に曝されているということ
(Ⅱ)移民国家賛成派を利する状況を生んでしまったということ
(Ⅲ)編集権によって主張の方向性が変えられてしまったということ
これらは、どれも重要な論点です。それが、絡み合って展開しているのが今回の問題なのです。
ノンフィクション作家の関岡英之さんの名前は、日米構造協議や年次改革要望書やTPPの問題などで有名です。その著名人が、言論生命をかけて訴える媒体にASREADを選んだということは、嬉しくもありますが悲しくもあります。編集部の方々ともよくお話させていただくのですが、ASREADはまだまだ弱小媒体だからです。その弱小媒体で戦わなければならないことがあることからも、日本のマスメディアには構造的欠陥があるように思えるのです。
例えば、朝日新聞なら朝日新聞なりの主張でないと掲載されないですし、産経新聞なら産経新聞の見解に沿った主張でないと載らないということです。政治に限って考えてみても、論点は多岐に渡ります。ある分野では賛成でも、他の分野では反対ということになると、意見を載せてくれる大手マスメディアがなくなってしまうのかもしれません。
ここにASREADのような弱小メディアの存在意義があるのかもしれません。
ASREADの姿勢
本件のことも含めて、私はASREAD編集部の方々と話をさせていただきました。
私は念のために、社会人として妥当な提案もしてみました。それは、ASREADはあくまでも中立に徹するという提案です。メディアの一つとして記事を載せただけであり、フジサンケイグループに刃向うつもりは微塵もないという立場です。いざとなれば、関岡さんや私のような執筆者を切ることで、ASREADの被害を最小限に抑えるという作戦です。フジサンケイグループに依存した知識人も多く、そのような人たちと敵対するリスクを抱え込む危険性があるからです。
しかし、編集委員の中田さんや牧之瀬さんは、そのような提案に乗っかるような人たちではありませんでした。今回の件では、公論という観点から関岡さんの言い分が正しく、フジサンケイグループのやり口は不可解なものです。どちらに肩入れするかは、まともに生きる者なら分かるはずです。
彼らは、フジサンケイグループとの全面抗争も辞さないという覚悟を示してくれました。
(´;ω;`)ブワッ
公論を擁護するということ
今回の件でフジサンケイグループと対立するということは、フジサンケイグループを除くすべてのメディアが味方だと見なせる、ということです。もちろん、先方から誠実な回答があれば、敵対する理由はなくなります。そのときは、共に日本の言論を盛り上げていければと考えています。
ASREADは、公論を擁護する媒体です。思想の左右、世代の上下のみならず、知識人と一般人の区別もなく、建設的な議論の最後の砦になれればと考えています。
もちろん、将来のことは誰にも分かりません。私がASREADに切られることも、私がASREADを去ることもありえるでしょう。それでも今回の件で、多勢に無勢なところへ駆けつけたということは、ASREAD編集部も私も、恥ずかしいことではないと考えているのです。
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