アメリカ大統領は本当にトランプでよいのか
- 2017/3/8
- 社会, 経済
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※この記事は「チャンネルAJER」様より記事を提供いただいています。
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トランプ氏の大統領就任時の支持率は40%で不支持が54%、就任翌日には全米で数百万人の反トランプデモが行われ、反トランプデモは世界各地でも行われた。人種差別主義者の彼はいつどこで襲われるかもしれない恐怖の中で暮らさなければならないだろう。大統領選挙でもトランプ氏はクリントン氏に300万票差で負けていた。
トランプ氏を大統領にしてしまったのは、偏ったアメリカの報道である。彼の考えはどんなパブリシティーも得になるということ。ネガティブな報道が彼を有名にした。ネガティブな話題でも報道されないよりずっといい。スキャンダルでも報道されれば、人は彼に注目し、それが票に繋がった。
クリントン氏の失敗はトランプ氏の政策の間違いを話題にし過ぎたことだ。結果としてトランプ氏の政策ばかりが報道された。トランプ氏の政策は余り触れずに自分の政策を中心 にアピールし続ければ勝っていた。
トランプ氏の致命的な過ちは、製造業が「衰退」したのは工場がメキシコに移ってしまったと思い込んでしまったことだ。過去25年でアメリカの製造業雇用は500万人減少したが、NAFTAで増えたメキシコの製造業の雇用の増加は50~80万人にすぎない。アメリカ製造業の雇用減少は機械化、IT化である。
実際、製造業は衰退しておらず、鉱工業生産指数は増え続けている。つまり生産性が向上し少ない人数でより多くの生産ができるようになっただけだ。この傾向は誰にも止められず、『労働はロボットに、人間は貴族に』の世界へと移っていく。
単純素朴に考えてもトランプ氏の考えが間違いであることはすぐ分かる。ある企業がある機械を製造しようとしたとする。部品を輸入するときメキシコ製や中国製を使わず、割高なアメリカ製を使えと政府から言われたら、割高な製品となり、アメリカの消費者は割高な製品を買うことにより実質所得が減り貧乏になる。
割高な製品は国際競争力を失い売上げも利益も減少し、リストラをしなければならなくなり、多数の雇用が失われる。またそのような部品もアメリカで製造しなければならないのであれば、そのような工場はメキシコや中国との競争に晒され、賃金を低く抑えなくてはならなくなる。
100円ショップ(米国ではダラーショップ)の経営は成り立たなくなるし、消費者は割高のものばかり買わされる。
そんな質の低い雇用を増やすべきではない。これからのアメリカ経済を牽引するのはハイテク企業である。アップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、フェイスブックなどのような新しいハイテク産業に巨額投資をして雇用を作り出した方が国民を豊かにする。国際競争力があるので、メキシコなどと賃下げ競争をする必要はない。
ハイテク産業は高度な技術者だけを採用するだろうか。そうでもない。人工知能にはビッグデータが必要だし、それは人海戦術で蓄積していくしかないので広範囲の人材が必要となる。
ほぼ完全雇用の状態のアメリカに必要なことは質の悪い雇用を増やすことではない。むしろ、質の悪い雇用を質の高い雇用に置き換えることだ。アメリカにはゴーストタウンはたくさんある。大統領のやらなければならぬことは、時代遅れの廃れた産業を復活することではなく、未来を切り開く新しい産業を更に発展させることだ。
基軸通貨国であるアメリカは貿易赤字で世界経済に成長通貨を供給する義務があることを忘れてはならない。
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