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カテゴリー:小説
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思想遊戯(12)- パンドラ考(Ⅶ) 上条一葉からの視点
それはもう大昔からきまっているのだ。人間には絶望という事はあり得ない。人間は、しばしば希望にあざむかれるが、しかし、また「絶望」という観念にも同様にあざむかれる事がある。正直に言う事にしよう。人間は… -
思想遊戯(11)- パンドラ考(Ⅵ) 佳山智樹の視点(大学)
つまりゼウスは、 人間がどれほどひどくそれ以外の禍いに苦しめられても、 やはり生命を投げすてず、 たえず新たに苦しめられつづけていくことを欲したのである。 そのため彼は人間に… -
思想遊戯(10)- パンドラ考(Ⅴ) 水沢祈からの視点(大学)
あらゆる禍いにみちた瓶の中に 宝石のごとく貴重な希望が保存されているはずはありませんから。 ブルフィンチ『ギリシア・ローマ神話集』より 第一項 智樹「なあ、水沢。… -
思想遊戯(9)- パンドラ考(Ⅳ) 高木千里からの視点
イーアペトスの息子プロメーテウスは初めて泥から人間を作り上げた。 のちにヘーパイストスはゼウスに命じられて泥から女の像を作り、 これにアテーネーが生命を与え、 ほかの神々が思い思いの贈り… -
思想遊戯(8)- パンドラ考(Ⅲ) 峰琢磨の視点
パンドーラーは神々が象った最初の女である。 アポロドーロス『ギリシャ神話』より 第一項 佳山智樹とは、同じ学科だったこともあり、大学に入ってすぐに仲良くなった。何か、俺とはタイプが違うけ… -
思想遊戯(7)- パンドラ考(Ⅱ) 佳山智樹の視点(高校)
女たちを 禍いとして 死すべき身の 人間どもに 配られたのだ ヘシオドス『神統記』より 第一項 修学旅行が終わり、受験へと意識が向かいはじめる季節。なんとなく憂鬱な季節。 いつも… -
思想遊戯(6)- パンドラ考(Ⅰ) 水沢祈の視点(高校)
一つの神話があります。 例えば、それは“パンドラの匣”。 その物語では、神様がすべての悪を封じ込めた匣を、地上における最初の女性であるパンドラに渡します。それは、決して開けてはいけない匣なのです。開け… -
思想遊戯(5)- 桜の章(Ⅴ) 散る桜
第五節 散る桜 散る桜 残る桜も 散る桜 良寛の句より 第一項 桜の満開が過ぎ、桜の花びらが舞い散る。 僕は、図書館で本を読んでいた。ニーチェの『… -
思想遊戯(4)- 桜の章(Ⅳ) 桜の樹の下には
第四節 桜の樹の下には 桜の樹の下には屍体が埋まっている! 梶井基次郎『桜の樹の下には』より 第一項 上条さんは不思議な人だと思う。 あれだけの美貌もさることながら、… -
思想遊戯(3)- 桜の章(Ⅲ) 和歌
第三節 和歌 やまとうたは、 人の心を種として、 万(よろづ)の言の葉とぞなれりける。 『古今和歌集』[仮名序]より 第一項 一葉「桜が咲き始めていますね。」 上条さ… -
思想遊戯(2)- 桜の章(Ⅱ) 日本神話
第二節 日本神話 かれここをもちて、 今に至るまで天皇命等(すめらみことたち)の御命(みいのち)長からざるなり。 『古事記』より 第一項 一葉「佳山君。日本最古の歴史書には、… -
思想遊戯(1)- 桜の章(Ⅰ) 桜の森の満開の下
第一章 桜の章 桜の花びらが、静かに舞っている。 桜の美しさは、彼女に、とても良く似合う。 彼女は、僕の瞳を見て、持っていた石を胸の前で、僕に見えるようにかざして言った。 「この石は“…