トランプノミクスの長所と短所

※この記事は「チャンネルAJER」様より記事を提供いただいています。
 他の記事も読むにはコチラ

次期大統領に就くトランプ氏の経済政策「トランプノミクス」には長所と短所がある。NYダウ平均が史上最高値を更新しているところから、市場関係者は彼の積極財政に期待をしていることが分かる。法人税率を35%から15%に下げると言い、大規模な減税や公共投資を行うと言っている。
日本で安倍首相がこんな事を言ったら、マスコミは財政が破綻するとか言って狂ったように政府を批判し始めるだろうが批判はあたらないということだ。

日本人は異常なほど、財政赤字を嫌い、国の借金を増やしてはいけないと考えている。国は通貨発行権を持ち、徐々に通貨を発行し国民に渡せば、経済は拡大し国は発展する。通貨を国民に渡すということは、政府側は財政赤字になるということで、逆に財政黒字にするということは、国民からお金を取り上げるということだ。
国民の側からすれば、財政赤字にして、国民の懐を暖めてくれと要求すべきなのに、財政を黒字化しなければならないというマスコミの論調ばかりが目立つ。1982年9月に当時の鈴木善幸首相により「財政非常事態宣言」が出され、1995年11月に村山富市内閣で「財政危機宣言」が出された。
国の借金のGDP比は1982年には僅か62%、1995年には95%であった。こんな前から財政は危機的だったのかと質問主意書で聞いたら、安倍総理からの答弁書は「当時の財政状況も極めて厳しかった」と主張する。

現在、国の借金のGDP比が200%を超えたから財政が極めて厳しくなったのかと思ったら、なんと62%でも極めて厳しいのだそうだ。現在のアメリカの国の借金のGDP比は105%だから、その論理に従えばアメリカは積極財政などできないはずだ。
でもトランプ氏の積極財政(もちろん財政赤字は大幅に拡大する)は歓迎されている。それ以外の国の借金のGDP比はイタリア 138%、ベルギー 106%、スペイン 99%、フランス   96%、カナダ 91%、イギリス 88%、ドイツ 70%、オランダ 65%だから世界中の国々は財政が極めて厳しく、増税・緊縮財政しか許されないのだろうか。
本当にそうなら、世界は間違いなく大恐慌に陥る。実際はそうならないのは、財政は厳しくないと認識しているからだ。

国の借金は日銀が刷ったお金でいくらでも返済が可能だし、実際日銀は大規模に返済をおこなっているから財政は厳しくなどない。ところで、トランプノミクスは長所だけではなく、短所もある。トランプ氏の考えの間違いは雇用を増やすだけで国民は豊かになると考えている事だ。雇用を増やすだけなら最低賃金を下げれば良い。
そうすれば低賃金の雇用が一気に増えるのだが、国民はそれでは満足しない。豊かになるということは生産性を上げるということだ。そのためには国際分業が決定的に重要になる。あまり利益にならない工場をメキシコやカナダ等に移し、自国では利益率の高い仕事だけやる。そうすれば間違いなく豊かになる。
企業の中で儲からない部門まで国内に残すということは国を貧しくすることだ。もちろん、保護貿易は国際分業を妨げ、国を貧しくする。

日本は韓国などと比べても自由貿易協定が大きく遅れている。「農業を守る」ために保護貿易を行っているから、世界から取り残されつつある。東洋大学の滝澤美帆氏は日米の産業別生産性の比較を行っている。
それによれば、アメリカを100としたときの日本の生産性は化学が143.2、機械が109.6、建設業が84.5,卸売・小売りが38.4,飲食・宿泊が34.0,農林水産業が4.7である。やはり農林水産業はあまりにも低い。その非効率な農林水産業を守るために、自由貿易協定が進まず全産業の足を引っ張っている。
農民の生活保障をしっかり行った上で大規模化、ロボット化を進めるべきではないか。

小野盛司

ajer_banner

西部邁

チャンネルAJER

チャンネルAJERAJERcast/channelAJER

投稿者プロフィール

AJERcastは、channelAJERが運営する、政治経済専門Web放送サイト(AJERcast)です。
AJERcastでは、政治経済専門の情報番組を放送しています。

■当チャンネルの理念と目的■
◎目的
 デフレからの脱却と更なる日本経済の発展を目指す。
 東日本大震災からの復興財源確保の道筋を示し、
 国の政策に反映させるべく務める。

◎理念
 日本経済の成長発展を願い、国に対しマクロ経済学の視点から、
 財政金融政策への提言を積極的に行う。
 ①日本の国体を守るとの視点で提言を行う。
 ②公の機関や企業組織に対し、独立不羈の立場で提言する。
 ③日本の発展を毀損すると思われる発言に対し、
   積極的に議論を挑み、我々の旗幟を鮮明に示す。
 ④『日本のもの造り』を支援し、雇用の拡大と安定に努める。

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 2014-10-15

    何のための言論か

     言論とは、話したり書いたりして思想や意見を公表して論じることです。公表して論じるというその性質上、…

おすすめ記事

  1.  経済政策を理解するためには、その土台である経済理論を知る必要があります。需要重視の経済学であるケイ…
  2. 多様性(ダイバーシティ)というのが、大学教育を語る上で重要なキーワードになりつつあります。 「…
  3. SPECIAL TRAILERS 佐藤健志氏の新刊『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は…
  4. ※この記事は月刊WiLL 2015年1月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ 新しい「ネ…
  5. 酒鬼薔薇世代
    過日、浅草浅間神社会議室に於いてASREAD執筆者の30代前半の方を集め、座談会の席を設けました。今…
WordPressテーマ「SWEETY (tcd029)」

WordPressテーマ「INNOVATE HACK (tcd025)」

LogoMarche

TCDテーマ一覧

イケてるシゴト!?

ページ上部へ戻る