トランプノミクスの長所と短所
- 2017/1/26
- 社会, 経済
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次期大統領に就くトランプ氏の経済政策「トランプノミクス」には長所と短所がある。NYダウ平均が史上最高値を更新しているところから、市場関係者は彼の積極財政に期待をしていることが分かる。法人税率を35%から15%に下げると言い、大規模な減税や公共投資を行うと言っている。
日本で安倍首相がこんな事を言ったら、マスコミは財政が破綻するとか言って狂ったように政府を批判し始めるだろうが批判はあたらないということだ。
日本人は異常なほど、財政赤字を嫌い、国の借金を増やしてはいけないと考えている。国は通貨発行権を持ち、徐々に通貨を発行し国民に渡せば、経済は拡大し国は発展する。通貨を国民に渡すということは、政府側は財政赤字になるということで、逆に財政黒字にするということは、国民からお金を取り上げるということだ。
国民の側からすれば、財政赤字にして、国民の懐を暖めてくれと要求すべきなのに、財政を黒字化しなければならないというマスコミの論調ばかりが目立つ。1982年9月に当時の鈴木善幸首相により「財政非常事態宣言」が出され、1995年11月に村山富市内閣で「財政危機宣言」が出された。
国の借金のGDP比は1982年には僅か62%、1995年には95%であった。こんな前から財政は危機的だったのかと質問主意書で聞いたら、安倍総理からの答弁書は「当時の財政状況も極めて厳しかった」と主張する。
現在、国の借金のGDP比が200%を超えたから財政が極めて厳しくなったのかと思ったら、なんと62%でも極めて厳しいのだそうだ。現在のアメリカの国の借金のGDP比は105%だから、その論理に従えばアメリカは積極財政などできないはずだ。
でもトランプ氏の積極財政(もちろん財政赤字は大幅に拡大する)は歓迎されている。それ以外の国の借金のGDP比はイタリア 138%、ベルギー 106%、スペイン 99%、フランス 96%、カナダ 91%、イギリス 88%、ドイツ 70%、オランダ 65%だから世界中の国々は財政が極めて厳しく、増税・緊縮財政しか許されないのだろうか。
本当にそうなら、世界は間違いなく大恐慌に陥る。実際はそうならないのは、財政は厳しくないと認識しているからだ。
国の借金は日銀が刷ったお金でいくらでも返済が可能だし、実際日銀は大規模に返済をおこなっているから財政は厳しくなどない。ところで、トランプノミクスは長所だけではなく、短所もある。トランプ氏の考えの間違いは雇用を増やすだけで国民は豊かになると考えている事だ。雇用を増やすだけなら最低賃金を下げれば良い。
そうすれば低賃金の雇用が一気に増えるのだが、国民はそれでは満足しない。豊かになるということは生産性を上げるということだ。そのためには国際分業が決定的に重要になる。あまり利益にならない工場をメキシコやカナダ等に移し、自国では利益率の高い仕事だけやる。そうすれば間違いなく豊かになる。
企業の中で儲からない部門まで国内に残すということは国を貧しくすることだ。もちろん、保護貿易は国際分業を妨げ、国を貧しくする。
日本は韓国などと比べても自由貿易協定が大きく遅れている。「農業を守る」ために保護貿易を行っているから、世界から取り残されつつある。東洋大学の滝澤美帆氏は日米の産業別生産性の比較を行っている。
それによれば、アメリカを100としたときの日本の生産性は化学が143.2、機械が109.6、建設業が84.5,卸売・小売りが38.4,飲食・宿泊が34.0,農林水産業が4.7である。やはり農林水産業はあまりにも低い。その非効率な農林水産業を守るために、自由貿易協定が進まず全産業の足を引っ張っている。
農民の生活保障をしっかり行った上で大規模化、ロボット化を進めるべきではないか。
小野盛司
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