「成立なしで五輪開けない」って本当?!~共謀罪の危険性について改めて考える~

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東京五輪は共謀罪なしでは開けないの?!

法務省は1月20日召集の国会に提出予定の法案リストに共謀罪を盛り込みました。共謀罪の問題点については、以前書きました記事『共謀罪って本当に必要なの?~共謀罪の危険性について考える~』にて解説してあります。

異様な法律「共謀罪」

共謀罪法案は、過去に3度国会に提出となり、3度とも廃案になっています。
2002年 法制審議会で検討
2003年 3月 第156回通常国会に法案提出(廃案)
2004年 2月 第159回通常国会に法案再提出(継続)
2005年 8月 衆議院解散に伴い廃案
2005年10月 第163回特別国会に法案提出(継続)
2009年 7月 衆議院解散により廃案

廃案となった理由は、これまでの刑事法の常識に照らして異常な立法と、野党や世論の反発を招いたことが原因です。

共謀罪の立法としての異常さについては、上記記事でも指摘してありますが、改めて法体系の混乱という点と、違憲である可能性が高いという点の2点から簡潔に解説します。

まず、1点目の法体系の混乱に関してですが、まずは共謀罪の内容について簡単に説明します。刑法典では既遂の処罰が原則ですが、数少ない例外として、既遂以前の段階での処罰が認められています。

犯罪行為は、実際に何らかの犯罪行為を実行した場合には既遂、計画だけで、しとげてはいない場合。また、実行には着手したが、しとげられなかった場合には未遂となります。そして、特定の犯罪を実行する目的でその準備行為することが予備罪であり、共謀罪は、この予備罪のさらに前の段階、つまり、複数人で犯罪行為を行うように企てたり、あるいは相談しただけでも犯罪になるという法律です。(上記記事より)

世界大百科事典 第2版では、予備罪に関して、

刑法典においては,既遂の処罰が原則であり,未遂の処罰は例外的である。したがって,未遂よりさらに犯罪実現から遠い予備の処罰は,きわめて重大な犯罪について例外的に認められているにすぎない。

とあり、実際に日本で予備罪が適用されるのは、内乱、外患、私戦の三罪のほか、建造物放火、通貨偽造、殺人、身代金誘拐、強盗の五罪となっており、その対象は重犯罪に限定されています。

しかし、今回の共謀罪で適用される範囲は600余とされており、実際に準備行為を行う予備罪の適用が8種類の犯罪に限られているにもかかわらず、さらにその予備罪以前の段階である共謀罪が600余の犯罪に適用されるということは法の整合性を明らかに無視しています。

共謀罪は違憲の危険性あり

上記記事では、1ページ目の最後に

また、法律の専門家の中には、この共謀罪は定義が曖昧であり、どのような行為が犯罪とされ,いかなる刑罰が科せられるか,犯罪と刑罰の具体的内容が事前の立法によって規定されていなければならないという刑法上の原則である罪刑法定主義に違反しており違憲なのではないかと指摘する者もいます。

と書きました。この点に関しては、もう少し補足が必要だと思いますので改めて説明させていただきます。現在の共謀共同正犯では「黙示の共謀」が認められており、共謀罪ができれば、「黙示の共謀」で共謀罪成立とされてしまう可能性があります。

共謀とは、デジタル大辞泉の解説によると「二人以上の者が合意して悪事などをたくらむこと。」とありますが、黙示による悪事をたくらむことの合意を取り締まることなど、そもそも原理的に可能なのでしょうか?仮にこの「黙示の共謀」というものが、心の中でお互いに合意することなのであれば、『心の中で思ったこと』と紙一重というより、ほぼ同義です。近代刑法は、犯罪意思(心の中で思ったこと)だけでは処罰せず、それが具体的な結果・被害として現れて初めて処罰対象になるとしていますが、仮にこのような原則が破られるならば、それは明らかに思想信条の自由に真っ向から衝突することとなります。また、この「黙示の共謀」が具体的に何を意味するのか不明瞭であることから、どのような行為が犯罪とされ,いかなる刑罰が科せられるか,犯罪と刑罰の具体的内容が事前の立法によって規定されていなければならないという刑法上の原則である罪刑法定主義に違反しており違憲なのではないかという指摘もされているワケです。

「成立無しで五輪開けない」「これはテロを取り締まるための法律です」

とりあえず、基本的な問題点を2点ほど指摘させていただきましたが、これ以外にも共謀罪の問題点は専門家等からいくつも指摘されています。当然、それらの問題点のために過去には3度にわたって廃案となっていたワケですが、今回は、「テロ等組織犯罪準備罪」と呼び名を変えて、さらに「五輪開催」とこじつけて無理やり押し通そうとしています。

出来れば、別の機会で解説したいのですが、実際には共謀罪を成立させずとも五輪開催は可能ですし、テロ対策は現行法でも十分可能です。そもそも日本はアメリカやヨーロッパ諸国とは違い、武器の持ち込みや入手自体が極めて困難であり、銃の保持を法律で保障しているアメリカなどと同等以上に基本的人権や思想信条の自由を侵害する危険性を冒してまでテロの計画や準備を法的に徹底的に規制していく必要があるのかも疑問です。つまり、「東京五輪」というたかだか2週間程度のイベントのために、今後永久に基本的人権と思想信条の自由を侵害しかねない法律を通してしまう危険性とを冷静に考慮すべきであるということです。

この点に関して思うのは、そもそも原則的に共謀罪の成立の必要性はないという論点は別にして、五輪開催のための法律であるならば、五輪期間終了までの時限立法にすればいいだろうということ、さらに根本的な問題を言うなら、東京五輪がそんな世界中から危険なテロリストを呼び集めてしまう可能性のあるイベントだというなら、そもそもそんなもの開催する必要はないということです(そもそも単なる駆けっこや玉遊びに過ぎないのですから)。

安易な印象操作に惑わされないために

おそらく、今回の「共謀罪」は「テロ等組織犯罪準備罪」と呼び名を変更したために、反対者には「テロ犯罪を取り締まる法律に反対するということは、お前はテロリストの味方なのか?!」などという極めて軽率且つ安易なレッテル貼りが行われることでしょう。名は体を表すなんて言葉がありますが、自民党の常套手段である法律の名称変更は、この「名は体を表す」という言葉の裏をかいた姑息な手法であり、実際にはテロとは何の関係もない行為を厳しく取り締まる目的で成立させようとしている危険な法案を「これはテロ対策の法案なので安心してください」と言って騙すための手段です。

このような手法に騙されないためには、やはりある程度は意識的に情報を集め特に、表面上の名称だけではなく、一体これが何をどのように取り締まうための法案であるのか?じっくりと時間をかけて確かめていく必要があるでしょう。

西部邁

高木克俊

高木克俊会社員

投稿者プロフィール

1987年生。神奈川県出身。家業である流通会社で会社員をしながら、ブログ「超個人的美学2~このブログは「超個人的美学と題するブログ」ではありません」を運営し、政治・経済について、積極的な発信を行っている。

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