産経新聞のトークライブ詳報記事について効果的に考える

産経新聞トークライブ

産経新聞8月5日の朝刊6面、雑誌『正論』が月一回受け持つ欄にて〈中国の間接侵略に無防備過ぎる〉と題された、7月6日トークライブの詳報が掲載されました。この記事は、関岡英之氏の連載(第6回から第10回まで)で産経新聞の報道姿勢に疑義が呈されていた件に対応しています。

経緯と敬意

 本件での問題は、移民問題についての恣意的な産経新聞報道が、日本の移民国家化をサポートしてしまう恐れがあることでした。それに対し、8月5日の記事では、外国人労働者受け入れ拡大や移民政策についての問題点が産経新聞紙上に記載されました。特に、問題の本質は中国人移民だと明記されたのは特筆しておくべきことです。
 一連の騒動における目的を、移民問題における7月6日トークライブの内容を、主張の方向性が変えられることなく事実のまま産経新聞紙上に掲載されることだと見なせば、最低限の目的は達成されたと考えられます。
 産経新聞社、関岡英之氏、およびASREAD編集部に敬意を表します。特に、ASREAD編集委員の中田さんと牧之瀬さんにいたっては、私が知っている限りにおいても、読者から見えないところで精神的および実作業的にかなりの負荷がかかっていました。お疲れ様です。

より上位の目的のために

 恣意的な移民報道に抵抗した理由は、日本の移民国家化を防ぐという、より上位の目的のためです。さらに言えば、移民国家化を防ぐ理由は、日本をよい国にしたいという、より上位の目的のためです。上位の目的ほど抽象的になり、下位にいくほど具体的になる傾向があるように思えます。今回の一連の出来事も、より上位の目的と絡めて考えておく必要があります。
 正直なところ、私は産経新聞からの訂正依頼に応じた後、実際に移民問題に対する正当な主張が産経新聞紙上に載る確率は低いと考えていました。そのため、個人の見解であることを明記した上で、『産経新聞社からの訂正依頼について戦略的に考える』で産経新聞側を牽制しておいたのです。そうすれば、もし産経新聞に正当な主張が載らなかったとしても、日本の移民国家化を阻止するための(ささやかな)武器の一つを作っておくことができるからです。
 しかし、私の予想は良い方向へ外れ、産経新聞に正当な主張が掲載されました。8月5日の記事には、

〈7月8日付け本紙では、トークライブでの関岡氏の発言の一部を掲載しております。改めて、その概要を紹介しました〉

とあります。色々な意味で、うまい表現だと思います。せっかく産経新聞に外国人受け入れに伴う問題点が掲載されたのですから、その成果をより上位の目的にどう活かすかを考えておくべきでしょう。

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西部邁

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