社会的紐帯を支える社会保障制度ー社会保障制度の在り方を考えるー

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社会保障制度について、あなたはどう考えていますか?

社会保障制度にたいして、世間で一般的に「保守」と(自称も含めて)呼ばれている人たちからは、しばしば否定的な意見が聞かれます。それは、公共サービスの拡大によって自立精神が衰弱し、逆に依存心が増大すると、財政の膨張と負担の増大を招き、経済の活力を損なうとともに、社会全体にエゴが蔓延するという批判です。こうした主張は以前からかなり広く流布しています。とりわけ「小さな政府」を支持する人たちは、社会保障だけではなく、公共投資や教育などを含め、おおよそあらゆる政府の事業を否定的に捉える傾向がありますが、彼らは近年、財政再建を声高に叫ぶのにつれて、歳出で大きな比重を占めている社会保障費を最大の標的にしています。

 ところが、ほんの数年前には、社会保障制度をめぐって、まったく逆の問題が指摘されていました。それは、新自由主義的な構造改革路線の結果、社会保障制度が機能不全に陥り、国民不安を引き起こしており、その立て直しが急務であるというものです。こうした声がいわゆる「社会保障・税一体改革」につながったわけですし、その議論の過程においては、今後の医療・介護給付費は現行制度を投影した場合以上に増大するという将来像が提示されていたはずです。にもかかわらず、そうした議論はまるでなかったかのように、再び新自由主義的な構造改革路線の勢いが増しているのが現状です。現在の第二次安倍政権では、「自助、互助、共助、公助」という全体の体系のなかで、「自助」をことさら強調し、さらには成長戦略の名のもとに、公的給付範囲の縮小を狙うかのような議論が一部再燃しています

安易な二元論に陥る勿れ

 社会保障制度をめぐっては、これまでも機能強化と給付抑制のあいだで政策が揺れ動いてきました。そうして現在にいたるまで場当たり的な対応を繰り返してきたのですが、こうした混乱の原因は、社会保障の充実を求める側も、その縮小を求める側も、社会保障というものの捉え方がきわめて一面的だったからだといえるのではないでしょうか。単純化すれば、社会保障制度を重視する人たちは、平等主義のイデオロギーに立脚し、弱者救済のヒューマニズムを求める一方で、社会保障制度を軽視する人たちは、市場の効率性を礼讃し、自己責任を強調する傾向が強いという特徴があります。しかしながら、そのような一面的な捉え方をしていると、ヒューマニズムの偽善を振りまくか、そうでなければ能力至上主義の弊害をさらし出すか、いずれかの極端に走るだけになってしまいます。もっとも重要なことは、この両者のあいだのバランス、換言すれば、平等と格差のあいだで平衡をもたらすものとしての公正さの基準を求めることです。それを見失ってしまっているからこそ、その時々の移りゆく世論の動向におもねって、社会保障のバラマキを招くか、格差拡大による社会不安を引き起こすかのどちらかで、右往左往することになってしまうのです。

そもそも社会保障制度は何のためにあるのか

社会保障制度が必要となるのは、社会の統合や秩序の安定をもたらす市場経済の基盤だからであり、それによって社会全体の長期的な安定性が確保されてこそ、健全な経済活動も可能になるのです。社会保障制度は、決して不憫な弱者を救済するためだけにあるのではなく、強者の側にも便益をもたらすものであり、それゆえに強者であろうが、弱者であろうが、社会全体で互いに支え合っていく必要があるのです。もちろんその過程で自助努力がなくてもいいというわけではありませんし、支え合いの手段もひとつだけではなく、いわゆる「自助、互助、共助、公助」には相互補完的な関係があります。現在の安倍政権では、自助があってこその共助や公助であるという考え方が支配的ですが、共助や公助があるからこそ自助も可能になる、という側面もあることは十分認識しておく必要があります。

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西部邁

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