もう一つの見えない戦争ー世界は情報戦の中にあるー

インテリジェンスとは何か

本シリーズはインテリジェンスについて取り上げる連載ですが、そもそも情報とは何なのでしょう。世の中にあふれる情報を全て知ることが出来れば世界の状況を理解して指針を見出すことが出来るのでしょうか。
それは違います。能力的に不可能という意味ではなく、仮に全ての情報を知り得たとしても、意図を持たずに漠然と情報を収集するということが無意味ということなのです。

インフォメーションとインテリジェンス

情報と一口に言いますが、大きく異なる2つの概念を含みます。この概念を正確に分けて理解しなければ情報を理解することはできなくなります。

・information (インフォメーション) :生情報、集めてきたそのままの情報
・intelligence (インテリジェンス):生情報を分析して解釈を加えた「知見」

インフォメーションとはただ集めてきただけの生の情報であり、インテリジェンスはその生情報を分析することで得られる知見を指します。
また、誰かのインテリジェンスは受け手にとってはインフォメーションにもなります。

例えば、日照時間や気温、降水量というものがインフォメーションであり、そこから米の収穫量や花粉の飛散量が予測されるのが分析をした結果であるインテリジェンスだといえます。

そして、インテリジェンスそのものは目的ではなく手段なのです。つまりインテリジェンスは政策決定者の意思決定の材料として必要だということなのです。
逆に言えば、何を判断するのに必要かという意思がなければ漠然と情報収集をしても意味は薄いということなのです。

何の為に必要かという目的意識を持って情報収集をすることではじめて僅かな情報も見落とすこと無く拾い集めやすくなるし、インテリジェンスも作成しやすくなります。
逆に目的意識がなければインテリジェンスはおろかインフォメーションも得ることも難しくなるのです。

政策決定(作戦)と情報部門の分割

次に重要な事は政策決定者(軍では作戦部門)と情報部門は組織が分けられていなければならないということなのです。

意思決定のためにインテリジェンス情報が求められるということは、政策(作戦)サイドと情報部門が一体になった場合、インフォメーション情報が恣意的に利用される危険性があるということです。
つまりは、意思決定者が自分の都合のいいようにインフォメーション情報を加工してしまう、例えば情報が意思決定の材料になるのでなく、自分の行なうことの正当性を保証する為に利用されてしまうので正しいインテリジェンスが得られないという危険性を孕むのです。

ですから、アニメ『攻殻機動隊』の主人公が所属する公安九課のような武装組織と情報部門が一体となっている組織というのは、指揮官の先入観でインフォメーション情報が解釈されてしまい、誤った作戦を立ててしまうことが多くなってしまう危険な組織と言えます。
近年、この公安九課と同じような事をしているのがアメリカのCIAです。本来、国外担当の情報組織であるCIAが、アフガニスタンなどで無人航空機によりテロリストを暗殺するという情報と作戦が一体となる情報組織としては1番やってはいけないことをやっているといえます。

情報組織の鉄則は政策決定(作戦)と情報部門は別組織にしなければならないのです。そして、情報組織の人間も政策(作戦)には口を出さず、公正な第三者として分析された情報を提供することに徹しなければなりません。

加えて、人事においても他部門から情報部門への配置換えがあった場合は元の職場には戻れない片道切符にする必要があります。
何故なら元の職場に戻れるということはその人物が自分の出世の為に元の組織に都合のよい情報加工をしてしまう危険性があるからなのです。

→ 次ページ「情報収集の区分」を読む

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西部邁

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コメント

    • 誠神大和
    • 2015年 3月 05日

    既読感があった。中西輝政著『情報亡国の危機』に書いてあったこととほぼ同じ内容である。

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