もう一つの見えない戦争ー世界は情報戦の中にあるー

日本の課題

日本もスパイ組織を作れという問題提起がありますが、まずは他にやるべきことが山積しています。

・何のために情報が必要かという意識を政策決定者(政治家)や自衛官、外交官が持たなければならない。漠然と情報収集をするのでは意味が無い。

・自衛隊や外務省でオシントの訓練を行なうこと。そして情報を収集・整理・分析する能力を組織知として身につけなければならない。また、そのための予算を付ける必要がある。

・官民で諜報に対する意識を高めて防諜能力を高めなければならない。いつ他国に情報が漏れるか分からないような国には外国からの情報提供などはあり得ない。また、防諜意識を高めることで始めて防諜の為の法律や体制づくりの議論を行なうことが出来る。

・日本の情報担当者への偽装パスポートを外務省が発行するようにしなければ、外国の情報関係者が日本の担当者にあってくれない。なぜなら、情報要員と会う人物は情報要員だと分かりきった事なので、偽装身分でなければ外国で情報要員に会うことが困難である。

このように基礎を疎かにして一足飛びにスパイ組織を作っても無意味だということがお分かりいただけるかと思います。

更に防諜体制が整っていない時点で、下手に情報組織を作ればCIAが第二次世界大戦中はソ連・共産主義者の巣窟であったように敵国の情報組織に乗っ取られる危険性があります。
果たして現在の日本で政治家や官僚の中に全く日本に敵対的な国の息が掛かっている人間がいないと言えるのでしょうか。

もし、私が外国の息の掛かった人間であるなら安倍政権にスパイ組織を作らせるように働きかけます。
軍事アレルギーが官民を挙げて強い我が国では強い反発は必至となるでしょう。「安倍政権は戦争をしようとしている。軍靴の音が聞こえる。」とマスコミを煽ればあわよくば支持率低下で安倍政権を倒すことが出来るかもしれません。

また、情報組織が出来たとしても、情報の基礎も防諜の意識も薄い日本ではスパイが1人でもその組織に入り込めばやりたい放題できるでしょう。例えば、現場から上がってきた情報を握りつぶす。または恣意的な解釈を加えて全く異なる結論を導き出すなど方法は様々です。
例えば安倍首相の退陣と引き換えに情報組織を作らせ、その中でスパイが意思決定を誤るような情報を制作決定サイドに流し続け、日本を影から操ることを目論みます。

このように「これさえやれば日本は安泰」という特効薬は存在しません。むしろそれが毒薬になる可能性すらあるのです。
戦後70年間紆余曲折ありながらも、結局は自分の身は自分で守るという意思を日本人全体で共有することがありませんでした。そこを疎かにしてきた以上、まずは私達日本人が国防に関心を持ち、情報とは何かということを知ることからはじめなければならないのです。

ですが決して悲観的に捉える必要はありません。日本人は国民全体の知的水準は世界の中でも非常に高い部類に入るのです。その日本人が国防の共通認識と情報の基礎知識を身につけることが出来れば、それだけで強力な国防体制を築くことが出来るでしょう。
まずは基礎から身につけることに専念するのが最も効果的なのではないでしょうか。

なお、本稿は倉山塾「樋口恒晴の安全保障講座」『第6回諜報・防諜―常在戦場』に依拠しています。
倉山塾を主催する倉山満氏と講師の樋口恒晴氏には多くの示唆を与えて頂きましたことをここに感謝致します。
万一、本稿で内容に誤りがあった場合にはひとえに筆者の誤解が原因であり、倉山氏と樋口氏の責任でないことをここに明記しておきます。

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西部邁

南慧介

南慧介フリーライター

投稿者プロフィール

昭和60年生まれ。広島県出身。

主著 :倉山満『軍国主義が日本を救う』(平成26年、徳間書店)
ほか編集協力

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コメント

    • 誠神大和
    • 2015年 3月 05日

    既読感があった。中西輝政著『情報亡国の危機』に書いてあったこととほぼ同じ内容である。

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