世界一「同質的」な日本の大学生たち ~なぜ大学から多様性が消えたのか~

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多様性(ダイバーシティ)というのが、大学教育を語る上で重要なキーワードになりつつあります。

「多様なバックボーンを持つ学生を擁することで、グローバル化する世界に対応できる人材を育てる」

そういった視点から、各大学が「個性」のある学生を採ろうと、独自の教育カリキュラムや入試におけるAO入試の実施など、様々な施策を取り入れています。

しかし、その成果が上がっているかというと、少々疑問符がつくところです。

なぜ日本の大学は多様性を持つことができないのでしょうか。
その原因のひとつに

「18歳で大学に入学する」

という、日本独自の事情があります。

学生の年代に多様性がない日本の大学

「えっ。大学って普通は18歳、浪人してもせいぜい20歳くらいで入学するものじゃないの?」

そう思われた方もいると思います。しかし、それは国際的な基準で見れば極めて異様なことです。
実は、世界の大学の平均入学年齢は20代前半から後半であることが一般的なのです。

例えばアメリカでは、大学新入生の平均年齢は23歳です。
日本の入学者平均が18歳ですから、「5浪」して入学するのが普通、という計算になります。
オーストラリアは24歳。「6浪」です。

英米圏だけではなくヨーロッパでも事情は同じで、スウェーデン25歳、スイス24歳、ドイツ22歳…とほとんどの国で入学年齢はかなり高めです。
日本のように18歳が平均入学年齢になる国は全くありません。

平均を見ると、OECD平均で22歳、EU平均でも同じく22歳。

もちろんこれは「全員が22歳で入学する」というわけではなく

「18歳で入学する人もいれば、26歳で入学する人もいる。色々合計して平均すると22歳」

ということです。もちろん18歳の時点で大学に進学することもかなり主要な選択肢のひとつですが、高校卒業後、多様な経歴を経てから大学に入学する人も極めて多い、ということがこの数字からは読み取れます。

多様な学生のバックボーンが大学に活気を生む

大学入学者の年齢が多様だということは、それだけ様々なバックボーンを持った人間が大学という場で出会うということです。

高校を卒業して何年も経っているわけですから、当然労働者として働きにでた経験を持つ新入生も多く存在します。
働いた先で新しい技術や知識に興味を持ち、学びたいという気持ちを抱いたかもしれません。
もしくは雇用システムや労働環境に問題意識を抱き、そこから社会科学への興味を抱いたのかもしれません。

労働だけではありません。
たとえば恋をし結婚し、父親や母親になった人も多いでしょう。
アメリカの初産年齢は25.4歳、大学新入生平均とたった2歳しか違いません。

もちろんその他にも、NPOやNGOなどでのボランティアや起業やインターンなどのビジネス経験、音楽や芸術などの文化的な経験など、特殊な経験を積んだ新入生が数多く存在します。

そんな全く異なった経験、バックボーン、価値観を持った学生が同居するからこそ、大学には活気が生まれます。

活発な討論授業が可能になったり、ビジネス経験を持つ学生たちの間で学生ベンチャー起業が立ち上がったり、数多くのNPOやNGOが生まれたり、欧米の一流大学のこういった活気の秘密は、このような学生側の多様性というところに多くを負っているのです。

多くの起業家を生み出していることで有名なスタンフォード大学の学長のジョン・ヘネシー氏は、

「教員だけでなくほかの学生からも多くのことを学ぶことがスタンフォードの強み」

と日経新聞のインタビューで答えています。

「多様性」というファクターを世界の一流大学の経営者たちが極めて重視していることが伺えるコメントです。

→ 次ページ「世界で最も「均一」な日本の大学生たち」を読む

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西部邁

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