日本に学べの時代がまたすぐ来る

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※この記事は月刊WiLL 2015年4月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ

「発信する日本」誕生

 ワシントンの大きな本屋へ行くと、売り場が政治・経済・趣味・スポーツなどに分かれているなかにローカルというのがあって、ワシントンが世界の中心なら、ローカルとはそれ以外の全世界のことかと奇異に思って覗いてみると、そのコーナーにはワシントンの市内観光案内の本が並んでいた。

 そうか、ローカルには田舎とか辺地の他に地元という意味があった、と気がついたが、日本ではいままでそんな使い方はなかった。

 安倍首相が施政方針演説で説く「地方創生」の意味は地元の自立と地元の尊厳なのに、一般国民はまた補助金が貰えると喜んでいる。官庁も中央集権化に利用しようと誤解している。

 第一次世界大戦終了時にも、地元の時代のブームがあった。それは国家は戦争好きで、中央に集中して権力をもっぱら破壊と殺戮のために使うから、ヨーロッパは昔に戻って国家よりそれぞれの地方に分かれて暮らしたほうがいいという考えで、エスニシティとかフォークロアとか、民族の自決とか地元文化の振興とかが唱えられた。

 政治的には国際連盟が誕生し、日本人の新渡戸稲造が事務局次長に登用された。アメリカも国際社会に新入りで、ウィルソン大統領は秘密外交の廃止、自由貿易、民族自決などを唱えて人気を集めた(中国ではウィルソン地蔵が立って、農民の信仰を集めたらしい。その写真がある)。

 いまも似たような状況があって、世界は新しく生まれ変わろうとしている。具体的に言えば大国より小国、軍事大国より経済大国、生産より金融、文明より文化、イデオロギーより宗教、一神教より多神教、理性より情感、普遍性より固有の価値などへ人々の関心は移動している。

 その結果の一つは日本重視の流れで、日本は世界のコア(中心)になりかけている。

 これは、日本には何かそれだけの資格や条件があると考えることもできるし、日本は一千年前から不変だが、世界がそれに気がついてきたということもできる。

 安倍首相は国際的に承認された人権・道義・平和・繁栄を語って日本の主導性や主導力は言わないが、それは世界のほうが段々に認めている。

 日本の外務省は「敗戦国の外交には限りがある」としてそれを打破する努力を自ら放棄してきたが、いまは日本の主導性発揮を望む外国が現れてきた。だから地球儀外交は成功しているのである。

 日本のマスコミはそれを報じないが、一般の日本人やビジネスマンは、日本を「ビッグブラザー」とか「マスター」とか「グレート」とする外国の声をたくさん聞いている。

 そのため、世界のありように対して発言することは日本の責務になりつつある。日本はいつの間にか辺地ではないところに立っていて、日本が立っている周りに人が集まるのである。

 ヨーロッパでパーティがあると紳士、淑女がグラスを持って輪になっている中心にいるのはいつもイギリス人だという話があるが、それがあと少しで日本人になりかけている。

 日本は話題が多い国で、そのうえ意見がある国に変化を始めている。日本の官僚、政治家、学者の周りに集まる人は少ないが、ビジネスマンや文化人、エンジニアの周りには自然に人が集まっている。

 発信する日本の誕生である。

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西部邁

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