日本に学べの時代がまたすぐ来る
- 2015/4/9
- 文化, 歴史
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後進国開発の現実
もう一歩踏み出せばどうなるかと考えると、日本の声をもっと聞き、日本をもっとマネしたいと考える国々から推挙されて、日本が世界の司会者かまとめ役か、リーダーになる時代が見えてくる。その先は仕切る日本である。
昔の日本の偉い人の履歴書を見ると、トップの座に就いたのは「推されて」と書いてある。「決選投票に勝って」ではない。それはアメリカである。どちらがよいのかは一概に言えない。両方あって、それぞれに選べるのがよい国である。
グローバル・スタンダードとローカル・スタンダードについて書いてみる。
その一、インドネシア賠償とデヴィ夫人
学生の時、私は後進国の開発を勉強のテーマに選んだ。それは日本が援助や賠償をバラまく国に発展したので、卒業後も外務省や勤務先の銀行の仕事として、後進国への調査へ行く機会にがった。
インドネシアへ行くと、ジャカルタ市民は元陸軍少将で、独立戦争の時、日本軍の将兵が助けてくれた感謝と、オランダが軍事力を派遣して独立を否定する戦争を始めた時、頃合いを見てアメリカが旧植民地回復の戦争は正義に反するとして調停してくれたことの感謝の二つを語った。
続いては日本がカネを出し、アメリカは仕事を取っていく時代が始まったとも語った。
日本の商社はデヴィ夫人を通して仕事の注文を貰い、キックバックを出し、また日本の政治家にも政治献金をしたが、その時、アメリカもまた利益を取っていたことはあまり知られていない。
設立されたばかりのインドネシア総合開発省へ行くと、IMFからの駐在員が大きな部屋にいる。
「あの人が全部を決めているのです」とインドネシア人の幹部が言う。具体的に言うと、日本の賠償かまたは援助のカネで鉄橋を作るとすると、まずアメリカの設計会社がやって来て、使用する鋼材の寸法や強度を日本のメーカーが作っていないものにする。もちろん、それはアメリカのUSスチールの主力商品である。
しかし、日本の鉄鋼会社は頑張ってUSスチールと同じものを作る。それには設備投資が要るのでコスト高になるが、そこは低賃金か残業か合理化か新鋭化で乗り切る。と、あとはUSスチールの客は根こそぎ頂戴して、USスチールは倒産で、日本は御承知の高度成長という時代になる。
丸損だったオランダ
当時、世界一だったパンナムの飛行機で隣り合わせた男は、私に「日本はバカだ。おかげで自分はウハウハで儲けている」と教えてくれたことがある。
「鋼材にはグレードが決まっているが、日本製は上等でB級でもA級の強度と品質を持っている。私はそれを発見したので、日本のB級を買って世界にA級の値段で売りまくっている」
と言って笑った。
下品な笑い方だったので、「そんなことでは永久に日本に勝てないよ」と思ったが、下品という英語を知らなかったので黙っていた。
あの頃はインドネシアの少将もIMFの人も日本の商社の人も鉄鋼会社の人も、それぞれ忙しく働いていた。日本の政治家も働いていたのだろうか。日本のスタンダードでは汚職だが、グローバル・スタンダードで言えばよく働いて日本に利益をもたらしていたと考えると、納税者は丸損だったとも言えない。
こうした関係者の間を貫いて存在していたグローバル・スタンダードは統計にも資料にも出てこないが、ともかく何かの均衡点をめぐって形成されている相場があった。
ともあれ、丸損したのはオランダである。だからオランダのトップは宮中晩餐会で、「日本はオランダからインドネシアを奪った」などと粗野な発言をした。それは恥の上塗りだと思うが、その時、うまく上品に反論しなかった日本人の出席者も情けない。
その二、グローバル・スタンダードと山下勇社長
経団連副会長で三井造船の社長だった山下勇氏は偉い人だったと時々思い出すが、ある時、ヨーロッパから帰るとこう言った。
「あちらではグローバル・スタンダードと称するものを、ありとあらゆる工業製品について決めようとしている。日本には不利なように決めるに決まっているから、日本も参加して委員を出す必要がある。しかし、経団連の人々も政府の人も自分が派遣されるのを恐れてか、誰も話に乗ってこない」
「わが社のエンジニアたちは『社長、大丈夫ですよ。どんなスタンダードを決められても、わが社はそれに勝ってみせますよ』というが、なぜ先手必勝を考えないのか」
と歎いておられた。
柔道の山下は、オリンピック柔道に指導とか青服とかを決められても何も言わない。
選手は「一体、日本は講道館柔道の全日本で勝ってほしいのか、それとも外人的ルールの金メダルが欲しいのか、どちらなのか。二種類の柔道を練習するのは大変だ」ともう四十年も五十年も前から言っている。
ニッポン・ルールがすなわち柔道のグローバル・スタンダードだとなぜ言わないのか。
ルール戦争では、日本はスキーでも水泳でも外交でも負けまくっている。ルールを決める人を欧米ではルーラー(統治者)という。日本の偉い人はルーラーになる気がないらしいが、かわいそうなのは現場である。
安倍首相よ頑張ってください、という人が多いが、後方から声援するだけではグローバル・スタンダードの戦争には負ける。まず、外国は腹黒いと思わねばならぬ。腹黒いと分かるまで勉強しなくてはならぬ。それから日本はこう考える、と世界に呼び掛けて戦わねばならぬ、と永い間思ってきたが、最近は戦う人がだんだん出て来たので喜んでいる。
フランスの外相だと記憶しているが、ある時、「国際社会は×××と決めたが、フランスは参加していない。フランスは孤立してもよいのか」と訊かれた時、「フランスが参加していないのであれば、『国際社会の決定』は成立していない。国際社会はフランスを含めて存在している。国際社会の外にフランスがあるのではない」と答えた。
日本人もこう答えなければならない。
「グローバル・スタンダードは日本が参加した時、初めてグローバルなものになる」と(その推進方法についてはもうたくさん書いた)。
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