ユネスコ記憶遺産とは精神のグローバリズムである

 10月9日、国際連合教育科学文化機構(ユネスコ)の記憶遺産に、中国が申請した「南京大虐殺文書」の登録が認められました。 中国が主張してきた「南京大虐殺30万人説」が、何の証拠も確実な目撃証言もなく、写真資料なども偽造や他からの借用ばかりであることは、これまで何度も論じられてきました。ちなみに南京は人口百万の大都市でしたが、1937年12月13日の南京陥落当時は、ほとんどが上海その他に逃げ出しており、10万人から20万人ほどだったというのが最も有力な推定です。そうして陥落後の1938年1月には逃げていた人たちが徐々に帰ってきて、25万人と増えました。さらに9月には40万人から50万人に達したと言われています。この一事をもってしても、30万人説がまったくの捏造であることは疑いの余地がないでしょう。
いわゆる南京大虐殺~南京の人口推移からの考察
 また陥落からわずか10日後の12月23日には、日本軍の管理のもとに南京自治委員会が成立し、治安がほぼ回復しています。
和平交渉・南京戦
 そんな短期間に30万人もの大虐殺を行うことは物理的に不可能ですし、またどうやってその軍隊の恐ろしい狂騒を鎮め、酸鼻を極めたはずの膨大な遺体を処理したというのでしょうか。
 概して日本軍の南京入城から秩序回復までは平穏裡に行なわれました。南京攻略に先立つ12月7日には、蒋介石以下の中国軍および政府要人・公務員は、防衛司令長官・康生智を残して重慶に向けて脱出しており、そのため市街は無政府状態に陥り、電気・水道が停止しています。これが何と日本軍管理下の12月31日には回復しているのです。「大虐殺」などが存在しえなかったことは、これによってもわかります。
南京攻略戦
 そもそもこの大虐殺説は、当時国民党の宣伝工作にかかわっていた疑いが濃厚なティンパーリとスマイスという二人の外国人ジャーナリストによる『戦争とはなにか』という書物を根拠としています。
北村稔
 またあれほど躍起となって情報宣伝工作に精力を注いでいた蒋介石自身が、もしこの事件の実在を重慶で知ったら、さっそくそれを対日宣伝に使わないはずがないのに、そういう痕跡はまったくありません。
 そういえば、先だっての抗日戦争勝利70年記念式典での習近平主席の演説でも、中国軍民死傷者3500万人という数字が飛び出しましたが、これは、1950年の共産党政権樹立当時は1000万人、1985年には2100万人と発表され、1995年、江沢民政権の時に突然3500万人に膨れ上がったそうです。
中共は、歴史問題についてなぜ堂々とウソをつくのか(その1)
 まさに中国お得意の「白髪三千丈」というヤツですね。しかも日本軍が上海や南京で戦っていたのは中華民国の国民党軍であり、戦後成立した共産党政権ではない。これは誰でも知っている事実です。
 ちなみに例の式典に際しては、その前からさかんに抗日をテーマとした映画が上映されたのですが、その中にチャーチル、ルーズベルト、蒋介石が出席した1943年のカイロ会談を扱ったものがあって、そこには蒋介石はいず、代わりに毛沢東とスターリンが出席したことになっていたそうです。こうなるともう茶番以外の何ものでもありませんね。
 何はともあれ、中国発のこの種のデタラメのたぐいが、ユネスコ記憶遺産として登録されてしまったのです。もともとユネスコが属する国際連合とは戦勝国の連合であり、当然そこには、アメリカに便乗して戦勝国の一員にしてもらった中国の言い分を受け入れる心理的下地があるのでしょう。敵国であった日本の言い分を聞くよりは、かつての日本はナチス・ドイツと同じような暴虐なファシズム国家であったという戦勝国物語をそのまま継続させることができるので、「連合」にとってはまことに都合がいいわけです。アメリカおよび国際連合は、いまだに大国日本が東アジアにおける覇権を握るのではないかと恐れているのです。

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西部邁

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