もう一つの見えない戦争ー世界は情報戦の中にあるー

情報収集の区分

情報収集の手段によっても用語が変わってきます。

・OSINT(Open Source Intelligence、オシント):公開情報資料(官報、マスメディアなど)からの情報収集
・HUMINT(Human Intelligence、ヒューミント):人間を情報源とする情報、合法な方法が外交官であり、外交慣例で禁じられた方法や非合法な方法で取得するのがスパイである
・ELINT(Electonic Intelligence、エリント):レーダーや電波など電子情報を情報源とする情報
・COMINT(communication Intelligence、コミント):通信傍受などによる通信情報から収集した情報
・SIGINT(Signal Intelligence、シギント):レーダや通信以外の電波信号や音響信号などの信号を検知して得た情報
・TELINT(Telemetry Intelligence、テリント):テレメトリー信号情報の収集、シギントに含める説もある
・IMINT(Image Intelligence、イミント):撮影で得られる画像情報。衛星写真、航空撮影、赤外線画像など

アニメや映画、小説などではスパイが虚々実々の駆け引きの中で敵地から情報を盗んだり、敵国のコンピュータをハッキングして情報を得ることが描かれることが多くあります。
では、実際に情報収集をする時にそれらが最も重要かというと、そうではありません。

公開情報の重要性

最も重要な情報収集は特別な事をしなくても誰でも知ることが出来るオシント(公開情報)なのです。公開情報こそあらゆる情報収集の基礎であり、研究者によっては全体の80~95%は知ることが出来る情報だと言われています。いずれにせよ圧倒的多くの情報は公開情報から得ることが出来ます。

なによりも、公開情報から情報収集して、資料を統合、インテリジェンス情報の作成や利用が出来ない人間がそれ以外の非公開情報に触れるのは無意味かつ有害なのです。
例えば、公開情報を知らなければ、スパイが命がけで資金をかけて得た情報が実は3日前の新聞に出ていた情報だったということがあると笑い話にもなりません。
公開情報を知っているからこそ、非公開の情報、また公開情報の何に偽りがあるかを区別することが出来るのです。

これらオシントは特別に訓練された軍人や外交官だけでなく、目的意識を持てば民間人でも公開情報からインテリジェンスを駆使することで正確に未来を予知することもできます
例えば、歴史研究者の岡田英弘氏は1972年のいわゆる日中国交正常化(正確には国交樹立)を公開情報だけで半年以上前に予期していました。

それは台湾(国府)の新聞を毎日読んでいるうちに、ある日それまでの親日的な論調が急に日帝統治時代の悪政があったなど反日的な記事が紙面を占めるようになったのです。
そこで、岡田氏はこれは近い将来、台湾が日本との関係で大きなショックが起こるのを見越して、国民に急激な衝撃を与えない為に事前に慣らしておくために反日的な記事を流していると考えました。

そこで岡田氏はその大きなショックとは中国(中共)と日本が国交を樹立して台湾との国交を断絶することに違いないと予測し、実際にその通りになりました。

他にも、常磐大学教授で国際政治学者の樋口恒晴氏は著書『「一国平和主義」の錯覚』(PHP研究所)やその改訂版の『「平和」という病』(ビジネス社)において新聞や国会答弁などの公開情報だけで、日本の戦後平和主義というものが一貫したものでは決して無いことを白昼のもとに晒しています。

例えば、自民党だけでなく社会党も憲法改正を前提としたことや、与野党で将来的には在日米軍が撤退することを前提とした再軍備の議論がされており、更には集団的自衛権の行使は自明のものという共通認識がなされていたことが紹介されています。
つまり、いわゆる護憲派のいう「戦後一貫した平和主義」というものが嘘であることや、保守派が「憲法改正をしなければ集団的自衛権が行使できない」というのが勘違いということが分かります。

このようにおよそ多くの事象は公開情報から情報収集をして、それを元に考察することで得られるのです。そこで得ることが出来ない残り数%の部分をその他の手段で入手していくことになります。

→ 次ページ「日本の課題」を読む

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西部邁

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コメント

    • 誠神大和
    • 2015年 3月 05日

    既読感があった。中西輝政著『情報亡国の危機』に書いてあったこととほぼ同じ内容である。

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