誰も語らない語れない不都合な真実、財政破綻

これまでの関連記事は以下をご覧ください。
他がために金は成る?ーデフレは財務省主導?ー(2014/12/29)
失われた20年:1997年以降の巨額の財政出動の行方(2015/1/13)
他がために金はなる?(続き)ー財務省のデフレ維持策の真実ー(2015/1/28)
他がために金は成る?(続きの続き)ー特別会計の闇ー(2015/2/5)

先送りされ、肥大化していく借金

財務省が2月10日に公表した2014年12月末時点の一般会計上の国の借金は約1030兆円でした。年度末(3月末)には1062.7兆円になる見込みという補足説明。
税収は約50兆円だから、一般会計上の借金約1030兆円は税収の約21倍の借金ということになります。

年収500万円の人が1億円以上の借金をしていることと同じです(特別会計を含めた4千兆円の借金ならば、年収500万円の人が8億円の借金をしていることになります)。
個人がこれだけの借金を抱えこめば、自己破産するしかありません。

前回、次のように書いたことを思い出していただきたい。

国(政府)は営利事業をやっているわけではないので、この借金の返済手段はありません。言うまでもなく税収で返済できるわけもない。

借金返済(国債の償還)期限がくれば、新たな借金(借換債:かりかえさいの発行)をして返済金にあてています・・・財務省資料、「国債発行額の推移(実績ベース)」によれば、借換債の発行額は1998年~2014年の17年間で、1475兆円超になっています(なぜこういう金額になるのか辻褄の合う説明もないのでわかりませんが借り換え債の発行は財務省の裁量に任されている)。

財務省には、「国債整理基金特別会計」という借金返済のための、もう一つ別の特別会計があります。

財務省の説明は官僚用語を巧みに使い分けて、素人にはわかりにくいのですが、簡略化して言えば、一般会計の借金と特別会計の借金を統合して(一元化)して、「国債整理基金特別会計」というもう一つの特別会計を通じて、「60年償還ルール:10年ごとに1/6減債、借り換え」の借換債を発行して、借金の償還と利払いを行っています。

問題点の一つは、特別会計の借金総額を不問にしたまま一般会計の借金と一元化して国債整理基金特別会計の返済ルール「60年償還ルール」に乗っけていることです。なにしろ普通国債と借換債を合せてこの10年間で1609兆円の国債を発行しています(財務省資料:国債発行額の推移(実績ベース)より筆者集計)。

財務省は、これまで「この借金はやがて税金で返さなければならず、公債発行による借金は、将来世代への先送りにほかなりません」と言ってきた、消費税アップへ誘導するための脅し文句にしてきた。ところが「60年償還ルール」は、これこそ「借金の先送りのルール」である、それだけ金利負担分が大きく圧し掛かります。

借金の償還期限が来たら、借換債(60年償還ルール)というもっともらしい新たな国債を発行して借金の延命策を図っているに過ぎない・・・借金返済のための新たな借金であることに変わりない。

回復の見込みがなく死期の迫った患者に、人工呼吸器や心肺蘇生装置を着けたり、点滴で栄養補給をしたりなどして生命を維持するだけの治療とそっくりです(苦笑)。

財務省は景気がよくなって金利が上昇することに怯えて、消費税アップを武器にして景気がよくならないよう必死にもがいているようにみえる、それだけに事態の深刻さがうかがえる。デフレ不況がこのまま続けば、均衡財政を達成することも不可能、従って国債費も垂れ流しと膨張を繰り返すことになる。

最早、雪だるまのように肥大化しながら坂道を転げ落ちてゆく巨額の借金の行方を止めることは、並の政策ではできそうもない。成長戦略を取ろうにも、成長分を遙かに超えて借金が膨らんでいくために有効な経済政策がとれない、つまり日本経済はアウト・オブ・コントロール(制御不能)状態に陥っている。

それにしても、「失われた20年(1990年代半ば以降)」は600兆円以上の巨額の財政出動しながらマイナスの経済成長とはひど過ぎた。

これにより一人当たり名目GDPは世界第9位(1997年)から32位(2013年)まで転がり落ちた(国連統計)。世帯あたりの年間所得は約127万円(全世帯に換算して63兆円超)低下した。国が使ったお金はどこへ行ったのだろうか。

筆者はこれまで、国の借金については楽観的であったが、特別会計の借金が一般会計借金の少なくとも2~3倍以上あることが推測され、金利負担増を恐れて景気浮揚策もとれない状態に追い込まれていることがわかると、事態の深刻さが増していると悲観的にならざるを得ない。

本記事を投稿するに当たって、いろいろ調べているうちに、
石光ゼミ:日本財政借金地獄―日本財政は破綻するのか(石井敦子)」  
という記事をみつけた。

この記事のなかに、財政破綻を次のように定義している。

財政破綻とは

財政赤字(政府債務)が持続可能であるとは、経済学の定義では、今後も従来の財政運営のままで国債を発行し続けても、国債(政府債務)残高が発散(無限に膨張)しないということである。国債残高が無限に膨張しないということは、財政が破たんしないことを意味する。逆に国債残高が無限に膨張するということは、将来のいずれかの時点で財政が破綻してしまうことを意味する。

この定義からすれば、日本の財政は既に破綻していることになる。こんなことは言いたかないが、残念ながら、日本国債はいつ暴落してもおかしくない状況にあると言える。 

→ 次ページ「打開策について」を読む

1

2

西部邁

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 2014-12-24

    『永遠のゼロ』を私はこう見る

     当サイトに、藤井聡氏のエッセイ「永遠にゼロ?」(2014年9月9日 三橋経済新聞掲載)に対する木下…

おすすめ記事

  1. はじめましての方も多いかもしれません。私、神田錦之介と申します。 このたび、ASREADに…
  2. 第一章 桜の章  桜の花びらが、静かに舞っている。  桜の美しさは、彼女に、とて…
  3.  現実にあるものを無いと言ったり、黒を白と言い張る人は世間から疎まれる存在です。しかし、その人に権力…
  4. ※この記事は月刊WiLL 2015年1月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ 新しい「ネ…
  5. SPECIAL TRAILERS 佐藤健志氏の新刊『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は…
WordPressテーマ「CORE (tcd027)」

WordPressテーマ「INNOVATE HACK (tcd025)」

LogoMarche

ButtonMarche

イケてるシゴト!?

TCDテーマ一覧

ページ上部へ戻る