「無税国家」はできるのか?
- 2016/1/21
- 経済
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※この記事は「チャンネルAJER」様より記事を提供いただいています。
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無税国家に関して、経済評論家の池田信夫氏と日銀の政策委員の原田泰氏がこの問題に関して論争をしている。原田氏は税金を廃止して国の予算は国債でまかなえば無税国家ができると主張する。発行された国債は日銀が買えばよいだけだ。刷ったお金で財政を賄うというシナリオだ。
池田氏は、もしそうしたらハイパーインフレになると主張する。実際、無税国家にした場合どの位のインフレになるのか、筆者は日経にお金を払ってNEEDS日本経済モデルで計算してもらった。日経が出した結果は驚くべきものだった。経済は大きく拡大するのだが、インフレ率は5年間の平均で僅か2%だという結果が出た。ハイパーインフレなんてあり得ない。しかしこれはデフレの日本だからそんなに低いインフレ率になるのであろう。そのまま無税の状態を放置すれば、どんどんインフレ率は上がってくるだろう。
日銀と政府を合わせたものを国とよぶことにしよう。国は刷ったお金で支出し、税金で回収することはしないとする。そうすると国民に出回るお金は毎年10%程度増える。もしも10%物価が上がったらお金の価値は10%目減りするのだから、実質的にお金を量は変わらない。10%のインフレ率は高すぎるということなら、インフレを抑えるために生産性を上げる努力をしなければならない。
その対策とは
(1)IT,ロボットなどを利用したりする方法で生産性を上げる。オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フライ研究員著は今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるという論文を書いた。自動運転車を使えば運転手はいらなくなり、運賃は10分の1になる。ドローンで商品配送をすれば、配送コストは8分の1になる。小売業も大規模化しドローンを導入すれば、流通コクトは大幅ダウンするだろう。農業のロボット化をすれば、生産コストはケタ違いに下がる。様々な分野でコストダウンの余地は大きい。
(2)高度なロボット社会になり、ロボットだけの企業が次々生まれてくるようになったとしよう。そのような会社の人件費はかからず、経費は非常に少なく、利益は多いから、莫大なおカネがその企業に流れ込む。政府はそのような会社を買収し、その利益を歳入の一部にすればよい。
(3)輸入自由化で輸入品のコストは下がり、産業の構造改革を進め、国際的な分業を進めればコストダウンが可能になる。
こういった対策によって10%のインフレ率が2%にまで下がるかどうかは分からない。結果をしてインフレ率が目標レベルより高くなりすぎれば、増税・金利の引き上げ・預金準備率の引き上げを行えば、過熱した景気を抑えることができる。
20年近くもの間、政府でデフレ脱却のための適切な経済政策を打ち出してこなかった。その間、日本の一人当たりのGDPはほぼ世界一だったのが20位にまで落ちて貧乏になってしまった。上記の議論からデフレ脱却の方法は明らかだろう。財政を拡大すれば、必ずデフレ脱却は可能だ。マクロ計量モデルで計算し、その結果をヒントに経済対策を行えば、目標の2%インフレ率は簡単に達成できる。原田・池田両氏の考えの折衷案だ。
小野盛司
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