人工知能に負ける仕事、負けない仕事

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人工知能(AI)の能力が人間を上回り、やがて人間から職を奪ってしまうと言われている。単純な仕事ほど人間は人工知能に負けると思われているが、それはちょっと違う。例えば、ワイシャツのボタンが一つ取れたとしよう。将来的には、ロボットがそれを付けてくれるかというと、そうなるかもしれないが、それはずっと先の話だ。各家庭に手先の器用なロボットが常駐し、それがボタンをつける。それもそのワイシャツにぴったりのボタンを捜してこなければならぬ。こんな単純な作業でも人工知能やロボットには意外と難しい。

もっとずっと複雑な仕事で、例えば日本語を英語に翻訳する仕事などは、すでに実現しているし、今後ますます精度が上がるだろう。チェス、将棋、クイズ、囲碁などにおいて、人工知能は次々と人間を破りつつある。これらはボタン付けよりはるかに難しい。結局、人工知能(AI)は易しい仕事から人間を順次超えていくのではない。人間を超えればインパクトが大きい分野から人間超えを行う。将来、人間を超えようと思えば、たいていの分野で超えられるだろう。10年は人間を超えられないだろうと言われていた囲碁においてもグーグルが開発した人工知能はプロ棋士を負かした。一方で知名度の低いゲームであれば、誰もそのためのプログラムを開発しないだろうし、開発したとしてもトップレベルの人間に勝てるものではないだろう。

AIに負ける仕事は何かと考える時、やはりAIの開発を考えるときの採算性が問題となる。AIの開発には多額の費用がかかるわけで、当然採算に合う職業から優先的にAIの導入が考えられる。その意味で自動運転車のインパクトは極めて大きい。運転手がいらなくなればタクシーは10分の1のコストでよい。ドローンで商品を運べば、運搬費用は8分の1,時間は4分の1と言われている。

マスターカードが、オンラインのクレジットカード決済における顔認証のテストを行っている。スーパーで買い物をするとき、顔を認識できれば、買い物かごの商品を自動判定し、値段を計算し、自動的に本人の銀行口座から代金を引き落とす。これならレジ係はいらない。もちろん、ある程度の規模のスーパーでないとこれはできない。個人商店での導入はコストが掛かりすぎるだろう。

このような状況を考えるなら、小売店も大型店と個人商店で採算性において差が広がっていくと考えられる。何もこれは小売業に限ったことはない。農業であろうと、製造業であろうと同じだ。何でもできる汎用ロボットが開発され、それが大量生産で安くできるようになれば、小規模の事業所でも、あるいは各家庭でもロボットの購入が可能だろうが、そこまでいくには時間がかかるから、まず大規模事業者からロボットが入っていき人件費を節約する。自由競争のままにしておけば、小規模事業者は次々消えていく。必要なのは、労働者を守るための政府の積極的な関与であり、大きな政府だ。最終的に職をつくりだせるのは政府しかいなくなる。必要なのは財政規模の拡大だ。それにより「労働はロボットに、人間は貴族に」という世界が開けていく。

小野盛司

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西部邁

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