黒田日銀総裁の嘘は国益を害する

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日銀は4月28日、2%程度の物価上昇率目標の達成時期について、従来の「2017年度前半ごろ」から「17年度中」に先送りした。物価上昇率目標の達成時期の先送りはこれで4回目である。黒田総裁は2013年3月に日銀総裁に就任し、2年で2%のインフレ率を達成するとしていた。エコノミスト達は日銀に対し冷ややかな見方を示している。
日経の調査では「日銀が2017年度前半にインフレ率2%にすることを目指す」としていたことに対して達成可能と思うかを、44名のエコノミストに質問している。これに対し「はい」(できると思う)と答えたのは14名、「いいえ」(できないと思う)と答えたのは30名であり、大半は黒田総裁を信じていない。

2013年8月5日に、黒田総裁は次のように語った。「消費増税の先送りで財政への信認が揺らぎ、国債価格が下落すれば財政政策でも金融政策でも対応は極めて困難になる。予定通りの消費増税に伴う景気の下振れリスクには財政政策で対応できる。」明らかにこれは嘘だった。消費増税は先送りされたが、マイナス金利となった国債価格は下落どころか異常な値上がりだ。2014年4月の消費増税で景気は下振れしているが、財政政策で対応できていない。

元々、アベノミクスは3本の矢(金融政策、財政政策、成長戦略)のはずだったが、実際は金融政策のみで日銀が刷ったお金で国債を買いまくっただけだ。刷ったお金の一部は日銀当座預金に積み上がり、残りは日銀券をして金庫に滞留している。デフレ下では、これらのお金はタンス預金化している。マイナス金利も導入され金融政策だけの一本足戦略に弊害も目立ってきた。

【1】過度の量的緩和が過度の円安を目指すものとして、諸外国から疑いの目で見られている。円安は「日本製品の不当廉売」と見なされ、近隣窮乏化政策として批判される。米財務省は4月29日、半期ごとの為替報告を公表し、日本などを為替政策の「監視国リスト」に指定した。円安誘導をさせないように厳しく目を光らせるということだ。
【2】資金力の豊富な金融機関は、財務省で売り出される国債を買っておけば、もっと高い値段で日銀が買ってくれる。いわゆる「日銀トレード」と呼ばれる利益が確実な取引だ。日銀は年間120兆円もの国債を買っているわけで、銀行は国民から預かったお金を企業や個人に融資するのでなく、このような安易な方法で利益を上げている。これがデフレの怖さだ。
【3】日銀は異常な高値で国債を買いまくっている。将来、日銀が保有する国債を売らなければならなくなったら、はるかに安い値段で売ることになる。そのとき何が起きるか(出口戦略)誰も知らない。

このように金融の一本足戦略は危険極まりないし、景気はいつまで経ってもよくならない。この難局を打開する方法は簡単だ。金融一本でなく、金融と財政の二本立てにすることだ。政府が減税や子育て支援、医療、介護、福祉、教育、公共事業等に思い切った財政支出を行えば、刷ったお金が国民の手に渡り、20年間滞留していたお金が流れ始める。そうなれば、企業は少々の金利を払ってでも、融資を受け設備投資を拡大し始める。失われた20年にストップを掛けられるのだ。

小野盛司

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