TPPで規制改革会議が外国人投資家の代弁者に大抜擢!

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 2015年10月5日、アトランタ閣僚会合において5年間の長きにわたるTPP協定交渉に一定の区切りをつける「大筋合意」が参加12か国間でなされました。内閣府TPP政府対策本部および農林水産省は、閣僚記者会見の後に現地で邦人記者を対象にした記者会見に合わせて、早々とホームページに事前に用意されたこれまでになく協定の内容に踏み込んだ資料を掲載しました。[注1]
 ぜひご自分でも読んで確認していただきたいのですが、複数公開された資料の中から筆者が最も注目した『TPP交渉参加国との交換文書一覧』と題された4ページの短い資料をご紹介します。[注2]

全て関係国と調整中

この資料のタイトルの横には(※全て関係国と調整中)と書かれています。大筋合意と言ってもまだ多くの重要な案件について最終調整ができていないことを示しています。しかし、どういった方向性で進めるかを約束したという内容ですからいずれ最終的に出てくるものも、このまま見守っていればこの延長線上で決まるということです。
たった4ページの短い資料の中で、驚き、呆れることが何度もありました。その中でも筆者が特に気になったのは次の3点です。
・自動車の非関税措置(日本-米国)
・保険
・投資(筆者注:この破壊力は並大抵ではありません。心してお読みください)

日米並行協議で話し合われた自動車関連の非関税措置撤廃は日本だけ

案件:自動車の非関税措置(日本-米国)
概要:自動車貿易に関する並行交渉の妥結を確認するとともに、日米両国についてTPP協定が発効する時までに日本がとる自動車関連の非関税措置等を記す文書。

 事前協議が終了した後、日米で発表された資料の内容やボリュームが違うことだけが大きく取り上げられました。しかし筆者は重要なのは日米間で交換された文書と、USTRが議会に宛てた日本との交渉開始の意思を通達する書簡であり、そこには並行協議は日本だけが一方的に自動車に関する非関税措置の撤廃を迫られる交渉だということを指摘してきましたが、今回公開された資料でそれが明確になりました。
 米国自動車メーカーが日本の国内道路事情や消費者の意向を考慮した車づくりをするなら話は別ですが、いくら日本側が自動車に関する非関税措置を撤廃したところで、米国産自動車そのものが非関税障壁である事実に気が付きそれを改めない限り、日本で米国産自動車の輸入が増えることはないでしょう。にもかかわらず、この先も日本の米国産自動車の輸入が増えないからと言って、永遠に日本の対応を求めてくる内容になっているであろうことが容易に想像できるため、気が重くなります。

麻生大臣がTPPとの直接の関連を否定した郵便公社とアフラックの提携拡大

○保険
両国政府は、①日本郵政の販売網へのアクセス、②かんぽ生命に対する規制上の監 督及び取扱い、③かんぽ生命の透明性等に関してとる措置等につき認識の一致をみた。

 麻生大臣は日米事前協議に決着が着くその日の記者会見で「かんぽ生命による新しいとか変更されたがん保険・単品医療保険の申請などについて」「たまたま日にちが重なっただけの話であって、TPPと直接関係するわけではありません。」とTPPとかんぽ生命の業務拡大凍結の関係を否定されました。[注4]
 また、当時失効中だった米国TPA法があたかも有効であるかのようにふるまっていたUSRTに付き合い、新しい自由貿易協定の交渉相手を議会へ通知する90日間を待って、日本が正式に交渉に参加を許されたコタキナバル会合終了の翌日、2013年7月26日に日本郵政とアフラックが業務提携を拡大してアフラックの商品を販売する郵便局を1,000か所から全国2万か所大幅拡大することで基本合意に達したと報道された際には、「日本郵政において、現時点で正式に決定しているという事実を知っているわけではありませんので、その質問はひっかけかどうか分からないから迂闊には答えられない」としながら、「TPPにどういう影響を与えるか、まだTPPは交渉を開始したばかりで、そこらのところの影響についても、今の段階で何とも言えません」と答えました。[注5]
 しかし実際には、直接関係ないどころではなく、TPPがかんぽ保険の新商品発売規制や、日本郵政の業務提携先に影響を与えたというのが真相だったことがこれではっきりしました。

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西部邁

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