グローバル金融危機の発生メカニズム
- 2013/12/27
- 経済
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インターネット動画「チャンネルAjer」の収録を行いました。今回は「グローバル金融危機の発生メカニズム」というタイトルで、全体で約55分のプレゼンテーションになっています。
1990年頃をピークとするバブル経済崩壊後の「失われた20年」の真因を理解する切り口の1つとして、不動産バブルとその崩壊を伴うグローバルな金融危機が周期的に発生するメカニズムをどう考えるかべきか、先行研究や、私自身が最近書き上げた論文を叩き台にして分析すると共に、そこから導き出される歴史の教訓について述べています。
20年弱の周期で発生する金融危機
2007年をピークとするサブプライム・バブルの崩壊、その後のリーマンショック、欧州財政危機などの一連の出来事を経て、金融ブームとその崩壊に伴う危機が周期的に発生する現象は、“financial cycle”(金融サイクル)と呼ばれて近年注目を集めるようになっています。
金融サイクルについて、実証的な見地からいくつかの有益な論文をまとめているのが、BIS(国際決済銀行)のエコノミストであるクラウディオ・ボリオです(彼の論文は、評論家の中野剛志さんの著作でも紹介されているので、ご存知の方もおられるかもしれません)。
彼の論文から金融サイクルの特徴をまとめると、以下のようになります。
「金融サイクルは、『銀行貸出や不動産価格の、トレンドからの大幅な乖離』によって特徴づけられる(金本位制の19世紀にも見られた現象)。」
「特にここ30年ほどは、それ以前と比べて金融サイクルの周期が長期化しており、それと共に金融危機も大規模化している。」
「『銀行貸出や不動産価格のトレンドからの大幅な乖離』からも明らかなように、金融ブーム(バブル)はそれ自身に崩壊を誘発するメカニズムを宿した、貨幣的すなわち名目ベースの現象である。」
図1は戦後日本における、実体経済の景気循環を代表する指標としての「名目GDP/名目公的支出比率」と、金融サイクルを代表する指標としての「地価指数の循環的要素(トレンドからの乖離)」(土地は不動産で、かつ銀行貸出の主要な担保です)の推移を示したものです。両者の動きはほぼ同期していて、なおかつ1970年代以降はその周期が長期化していること(約10年⇒約20年)が確認できます(ボリオ論文の中では、1985年頃が周期長期化の境目とされていますが、後述する背景、あるいは彼自身の共著論文で提示されている各国データを踏まえても、1970年前後を境界線とするのが妥当と考えられます)。
【図1:日本の名目GDP/名目公的支出比率と地価指数の循環的要素の推移】
ボリオは上記、特に3点目に挙げた特徴を踏まえて、「リアル・ビジネス・サイクル理論に代表される、貨幣要因を軽視し、なおかつ経済の均衡状態を前提として『ランダムな外的ショック』によって景気変動を説明しようとする(新古典派ベースの)主流派経済学を前提としたマクロ経済政策の枠組み」は大幅に修正する必要がある(むしろ戦前支配的だった内生的景気変動論に近い枠組みを導入すべきである)、と述べていますが、これは妥当な指摘と言えるでしょう。
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