グローバル金融危機の発生メカニズム
- 2013/12/27
- 経済
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(以下引用)
「さっきさりげなく、新しいシステムは古いものよりも平和をもたらしやすいかもしれないと述べました。その側面を改めて述べて強調しておく価値はあるでしょう。
戦争にはいくつか原因があります。独裁者のような連中は、少なくとも期待の上では戦争により楽しい興奮が得られるので、国民たちの天性の好戦性を容易に煽れます。でもこれを超えたところでは、世間の炎を煽る仕事を手助けするのが、戦争の経済的な要因、つまり人口圧と市場をめぐる競争的な戦いです。十九世紀に圧倒的な役割を果たしたのはこの第二の要因だし、今後もそうなるかもしれません。こちらの要因がここでの議論の中心となります。
前章で、十九世紀後半に主流だった国内のレッセフェールと国際的な金本位制のシステムでは、政府が国内の経済停滞を緩和する手段として、市場を求めて争う以外に手がなかったと指摘しました。というのも国にとって、慢性的または間歇的な失業を緩和できるあらゆる手段が排除されており、残った手段は所得勘定上の貿易収支の改善だけだったのですから。
ですから経済学者たちは現在の国際制度について、国際分業の果実を準備しつつ各国の利益を調和させているのだ、と賞賛するのに慣れていますが、その奥にはそれほど優しくない影響が隠されているのです。そして各国の政治家たちは、豊かな老国が市場をめぐる闘争を怠るならば、その繁栄は停滞して失速すると信じておりますが、それは常識と、事態の真の道筋に関する正しい理解であり、それが彼らを動かしているものなのです。でも各国が自国政策によって自国に完全雇用を実現できることを学習すれば(そしてまた付け加えなければならないのは、彼らが人口トレンドで均衡を実現できれば、ということです)、ある国の利益を隣国の利益と相反させるよう計算された、大きな経済的な力は存在しなくてすみます。適切な状況下では、国際分業の余地もあるし、国際融資の余地も残されています。でも、ある国が自分の製品を他の国に押しつけなければならない火急の動機はなくなりますし、他国の産物を毛嫌いする理由もなくなります(しかもそれが買いたい物を買う金がないからというのではなく、貿易収支を自国に有利に展開するため収支均衡をゆがめたいという明示的な目的のために行われることはなくなります)。 国際貿易は、今のような存在であることをやめるでしょう。今の国際貿易は、自国の雇用を維持するために、外国市場に売上げを強制し、外国からの購入は制限するというものです。これは成功しても、失業問題を闘争に負けた近隣国に移行させるだけです。でもそれがなくなり、相互に利益のある条件で、自発的で何の妨害もない財とサービスの交換が行われるようになるのです。」
(ケインズ「一般理論」第24章セクションⅣ~翻訳者・山形浩生氏ホームページより転載。傍線・太字は筆者による)
↓今回のプレゼン資料をまとめたものです。
グローバル金融危機の発生メカニズム(チャンネルAjer20131227).pdf
(参考文献)
植草一秀「アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪」(講談社、2013年)
島倉原「内生的景気循環モデルを用いた、日本経済の長期低迷の分析」(公開論文、2013年)
中野剛志「反・自由貿易論」(新潮新書、2013年)、「保守とは何だろうか」(NHK出版新書、2013年)
ジョン・メイナード・ケインズ「雇用、利子、お金の一般理論」(山形浩生訳、講談社学術文庫、2012年)
B. R. ミッチェル「イギリス歴史統計」(中村寿男訳、原書房、1995年)
Claudio Borio: “On Time, Stocks and Flows: Understanding the Global Macroeconomic Challenges,” An essay for a lecture at the Munich Seminar series (2012).
Claudio Borio: “The financial cycle and macroeconomics: What have we learnt?” BIS Working Papers No 395 (2012).
Mathias Drehmann, Claudio Borio and Kostas Tsatsaronis: “Characterising the financial cycle: don’t lose sight of the medium term!” BIS Working Papers No 380 (2012)
Carmen M. Reinhart and Kenneth S. Rogoff: “This Time is Different: A Panoramic View of Eight Centuries of Financial Crises,” NBER Working Paper No. 13882 (2008)
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