経済政策のあるべき姿
- 2014/3/3
- 経済
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インターネット動画「チャンネルAjer」の収録を行いました。
今回は「経済政策のあるべき姿」というタイトルで、全体で約35分のプレゼンテーションです。
動画:『経済政策のあるべき姿①』島倉原 AJER2014.2.28(5) – YouTube
前回の「日本経済の成長&景気循環メカニズム」というプレゼンテーションは、
- 日本のGDPは、不動産バブルを伴う20年弱のグローバルな金融サイクルの影響を受けつつも、公的支出の総額(政府や公的企業の消費及び投資の総額)にほぼ比例して成長している。この動きは、オールド・ケインジアン型の内生的景気循環モデルを使って説明できる。
- 1990年代後半以降の緊縮財政によって名目GDPの伸びを止めてしまったことが、民間企業の国内での投資意欲低下(すなわち中長期的な国力低下)を招くと共に、財政赤字問題や政府債務問題をかえって悪化させている。
- 従って、積極財政こそが、成長と財政健全化の実現にとって必要不可欠の政策であり、真の意味で経済政策の柱となるべき政策である(「1990年代前半の公共事業を中心とした景気対策は効果が無かった」というのは、主流派経済学が見落としている内生的景気循環メカニズムを無視した誤った議論であり、現在でも公的支出拡大による乗数効果は4倍以上あると考えられる)。
という内容でした。
今回は上記の議論を前提として、経済政策、特に財政政策のあるべき姿について議論しています。
即ち、
- (景気循環その他によって生じる)不安定化リスクを軽減しながら適正な経済成長を実現する。
を基本方針として掲げ、より具体的なポイントとしては、
- 財政支出(中央政府の他、地方政府・公的企業の支出も含みます)は安定的・持続的に拡大すべきである。
- 「異次元金融緩和」はできるだけ速やかに撤退すべきである。
の2点を挙げています。
財政支出は安定的・持続的に拡大すべきである
「不安定化リスクを軽減しながら適正な経済成長を実現する」という基本方針は、現実の経済が内生的な景気循環メカニズムを伴う不均衡状態のもとで変動している、という認識を出発点としています。
もちろん、20世紀前半のオーストリアの経済学者シュンペーターのように、「景気循環による不均衡とはイノベーションによって経済が発展する過程で生じるものであり、資本主義の下でのダイナミックな経済発展そのものである」として、景気循環を肯定的にとらえる考え方も存在します。
しかしながら、ここで議論している景気循環とは「所得と支出のタイムラグにより生じる不均衡状態」であり、シュンペーターが唱えるイノベーション(一言で言えば、生産性の高い分野への、生産資本や労働力のシフトを促す変化)とはそもそも次元が異なる概念です(例えば2000年頃をピークとしたITバブルは、「IT革命」というイノベーションが所得と支出のタイムラグによって増幅された現象であると考えられますが、「所得と支出のタイムラグ=IT革命発生の必要条件」という訳ではありませんし、ITバブル自体、本稿で取り上げている金融サイクルとは別次元の、いわば局地的な現象と位置付けるべきです)。
従って景気循環による過度な変動は、経済発展よりもマクロレベルでの歪んだ資源配分をもたらす弊害が大きいと考えるべきでしょう。
変動の度合いによっては己の存続すら危うくなる場合もある、ミクロレベルの家計や企業にとってはなおのこと、概ね望ましくない状態であることは言うまでもありません。
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