ギリシャ危機から日本は何を学べるか

2015年7月7日のブルームバーグの記事(緊縮では「のた打ち回る」とギリシャ証明、日本は成長重視-甘利氏 (1))を引用する。

国際通貨基金(IMF)への債務返済が6月末に滞り事実上のデフォルト(債務不履行)に陥ったギリシャについて甘利明経済再生相は、増税と歳出減では財政再建ができない証しだとして経済成長による税収増の重要性を示した。付加価値税と軽減税率上げによる増税や歳出減をしたギリシャは結果として「税収はもっと減ってしまった」と甘利再生相はブルームバーグのインタビューで2日語った。その上で「増税と歳出カットだけでやろうとするとのた打ち回るようなことになる」と述べ、健全な経済を取り戻すことで税収を増やすことなしに財政再建はできないとした。

甘利氏はインタビューで、これまでの財政再建は歳出カットの甘さによって失敗したとの一部の見方を否定。経済が失速して歳出減が続かなくなったとして「成長が確保されなくなって失敗している」と述べた。日本については「安倍内閣においては経済再生なくして財政再建なし。一言で言えば、デフレ下では財政再建はできない。そのことに向かい合う必要がある」と話した。

この記事について質問主意書で質問したら、次のような答弁が返ってきた。

お尋ねの記事については、甘利内閣府特命担当大臣(経済財政政策)は、経済と財政双方の一体的な再生が重要である旨の発言をしたものであり、政府としても、経済と財政双方の一体的な再生を目指しており、経済・財政再生計画に沿って「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」の3本柱の改革を一体として推進することとしている。

この答弁はちょっと的外れだ。甘利大臣は「緊縮では財政再建はできない」と言っている。この発言を裏返せば「積極財政なら財政再建ができる」となるのだが、今の政府関係者でそこまで言える人物はほとんどいない。

緊縮はよくないと言いながら、経済成長の必要性を説く。ではどうやって経済成長を実現するのか。彼らは第3の矢だという。しかし、安倍内閣が発足して2年7か月が経過した今、第3の矢の経済押し上げ効果はゼロだろう。

安倍内閣での実質GDP成長率は2013年度が2.1%、2014年度がマイナス0.9%で、平均すれば0.6%にすぎない。これは民主党政権時代の成長率より劣る。だから支持率急落も無理もない。アベノミクスに期待していた国民も今は失望し、やたらに安倍内閣の批判ばかりしている。

もともとアベノミクスは3本の矢であり、(1)異次元の金融緩和、(2)機動的な財政政策、(3)民間の投資を呼び起こす成長戦略である。2013年度はこの政策は成功し、実質2.1%の成長をし、圧倒的な国民の支持を得た。

しかし、2年目はこの3本の矢に入っていなかった消費増税を行ったためにアベノミクスを完璧なまでに壊してしまい国民の支持を失った。3年目も景気は回復していない。

これは1997年の消費増税のときのパターンと似ている。なぜ、過去の消費増税の失敗を繰り返すのか。更に悪いことに、2017年度には再度消費増税を行おうとしている。

甘利大臣の言うように、「のた打ち回るだけで財政を悪化させるだけ」の緊縮財政をなぜデフレ経済の日本で行おうとするのか。安倍首相にはもう一度初心に戻って欲しい。

西部邁

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