増税延期のシミュレーションを発表しなかった内閣府の大罪

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予想通り、来年予定されていた消費増税は延期された。3月に増税反対派でノーベル賞受賞経済学者のスティグリッツとクルーグマンが国際金融経済分析会合に招かれて首相官邸で消費増税延期の提案を行った頃から、安倍総理が増税延期を考えていることが公然の秘密となっていた。

しかしながら、内閣府は今年の1月21日に発表した「中長期の経済財政に関する試算」では、来年の消費増税が行われた場合の試算しか発表していない。筆者は内閣府に電話して消費増税が延期された場合の試算も出すよう強く要求した。しかし、内閣府の返事は「法律で決まっていることだから」と言って、消費増税が延期された際の試算を出すことを拒否した。消費増税延期が決まった先週も内閣府に電話して同じ質問をしたら、同じ返事の繰り返しだった。

「法律で決まっていても、法律は国会で変えればよいだけで、実際安倍総理は延期を決めた。」「首相は半年前から増税延期について考えていた。」「国民の7割程度は増税反対だった。」「政府はノーベル経済学者で増税反対派のスティグリッツやクルーグマンを招き意見を聴いていた。」「日本のエコノミストの多くが増税延期を主張していた。」などと筆者は矢継ぎ早に次々と質問を浴びせかけたが、内閣府の回答は「法律で決まっていたことだから」の繰り返しで、まるで回答になっていない。
国民を馬鹿にするにもほどほどにしろと言いたい。

内閣府の本音は「俺たちは、安倍首相に増税延期をするなと圧力をかけているんだから、お前は黙ってろ」ということだろう。シンクタンク各社やIMF等のシミュレーションで示されているように、もし消費増税が予定通り行われたら、来年日本はデフレに逆戻りするに違いない。内閣府にとっては、日本経済がどんなに悪化しようと国民がどんなに苦しもうと関係ない。増税をさせようと必死だ。内閣府が増税の場合と増税をしない場合の比較試算が出せない理由がある。それは、5%から8%への増税を行う前に行った試算が大失敗だったことだ。増税の影響は軽微だとした。

実質GDPにおいて両者の差は、4年間の合計で僅か0.1%だとしていたが、実際は2013年度から2014年度の1年間でその30倍のマイナス3%にも達した。このデータを取り入れて試算をすれば、2017年の日本経済は悲惨な状態になるのは明かだから、公表しない。影響は軽微と発表すれば、前回の失敗の反省は無いのかと非難される。ジレンマだ。

しかし、増税延期は決まってしまったのだから、今後増税延期の場合を計算して発表せざるを得なくなった。いずれにせよ内閣府の試算は狂った羅針盤と呼ばれ、大本営発表のようで、「経済は順調に回復」といつも発表し、後になって「思ったより悪かった」と下方修正している。毎年7月頃結果をまとめて発表しているが、今年はどうなるか分からないと内閣府は言う。今年も例年通り大幅下方修正をするだろう。例年と違うのは、消費増税をした場合としなかった場合を正直に比較せざるを得なくなったことだ。

1月に出した試算は消費増税をした場合、今後出す試算は消費増税をしなかった場合である。1月の試算では、消費増税をした場合、2017年度の実質GDPは0.6%で2016年度の値の1.7%より1.1%も下がる予想だ。消費増税延期となれば、実質GDPは2017年度は逆に2016年度より増える予想になるのではないか。経済規模が縮小でなく拡大基調になるのであれば、こんな素晴らしいことはない。僅か5.8兆円の増税のために経済を壊してしまっては元も子もない。増税延期の場合のシミュレーションを内閣府はもっと早く発表する義務があった。

このような「安易」な資金調達法は「財政ファイナンス」と呼ばれ、一度この手段を覚えると、何回も使いたくなるので結果として悪政インフレを招くと主張する人がいる。しかしながら具体的に現在の政治家の中で、果てしなく財政を拡大したがっている人がいるだろうか。

どちらを見ても緊縮路線の政治家ばかりで、強いて言えば亀井静香が積極財政かもしれない。それでも彼の考えている財政拡大規模はとても悪性インフレを招くような規模とはほど遠い。10〜20年後には人工知能やロボットが人間の職の半分を奪うと言われている時代だ。通貨発行に関してもっと柔軟な考えを持つようにしないと人類を悲劇が襲うこととなる。

小野盛司

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西部邁

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