経済政策のあるべき姿
- 2014/3/3
- 経済
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「異次元金融緩和」はできるだけ速やかに撤退すべきである
図3は「名目GDPに対するマネタリーベースの比率」と「地価指数のトレンドからの乖離」の長期的な推移を示したものです。「マネタリーベース=経済活動を円滑化させる金融機能の『原資』」と考えると、1990年代後半以降、現在に至るまでの水準は明らかに異常です。
【図3:マネタリーベース(名目GDP比)と地価指数(トレンドからの乖離)の推移】
さらに、1970年代前半、1980年代後半といった金融・不動産バブル発生とほぼ時期を同じくして、トレンドから乖離した過剰な金融緩和が行われていることがわかります(2000年代半ばについては、「量的緩和」という作為的な金融政策が先行したため、ややピークがずれていますが、そもそも恒常的な過剰緩和状態でした)。
これは結果的にバブル的な資産取引の原資となり、景気循環を増幅し、その後のダメージを深刻なものにしています。
すなわち、金融緩和が突出した現状の政策運営は、国民の中長期的な所得拡大にはほとんど貢献せず、あまつさえ消費税増税という緊縮的な財政政策を行うことで二重の意味で不安定性リスクを高めている(結果、経済全体の効率も低下させている)という点で、実は「百害あって一利なし」と言っても過言ではないかもしれません。
すなわち、「財政支出の安定的・持続的な拡大による適正な経済成長を主眼とし、金融緩和はそれをサポートする水準に止める」というのが正しい政策運営のあり方なのです。
こうした政策運営こそ、短期的な動向に囚われて自ら不安定要因となってしまう民間経済を補完するという意味でも、政府の面目躍如と言えるのではないでしょうか。
↓今回のプレゼン資料をまとめたものです。
経済政策のあるべき姿.pdf
(参考文献)
島倉原「内生的景気循環モデルを用いた、日本経済の長期低迷の分析」(公開ワーキングペーパー、2013年)
Paul A. Samuelson, “Interactions between the Multiplier Analysis and the Principle of Acceleration,” The Review of Economics and Statistics, 21 (1939).
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