日本の経済財政の試算を隠蔽する政府
- 2016/7/25
- 社会, 経済
- 23 comments
※この記事は「チャンネルAJER」様より記事を提供いただいています。
他の記事も読むにはコチラ
6月1日に安倍首相は2017年4月に予定されていた消費税率10%への引き上げを延期すると発表した。世界の中で一人負けの様相を呈する日本経済にとって、増税などできるわけがないのは当然だろう。増税を延期したからといってこのまま順調に日本経済が景気回復に向かうとは思えない。円高株安を考えれば、むしろ景気は悪化の方向に向かっているように思える。
人工知能(AI)の発達は素晴らしい。チェスも将棋も囲碁も、AIが判断した手順で世界チャンピオンを破ってしまう時代だ。もしAIが正しく活用されれば、経済財政政策の分野でも、馬鹿な政治家よりはるかに正確な判断ができて、国民を幸福にできるのは間違いない。しかしこの分野におけるAIの活用の実態をみると唖然としてしまう。
政府の経済財政の試算を行っているのは内閣府の計量分析室だ。マスコミも政治家も経済財政の将来予測に関してはこの内閣府の予測しか引用しないし各省庁が行う様々な分野の試算もこの予測をベースに行われている。それ以外の予測は引用に値しないと思っているのだ。しかし、この内閣府の試算ほどデタラメな試算はない。
「内閣府計量分析室」で検索すれば簡単にこの試算を見ることができるのだが、そこですぐ分かることは、モデルの改訂が2010年で止まっていることだ。もし2011年の東日本大震災以後のデータが入っていないとすれば、こんなモデルは使い物にならない。改訂したというなら改訂した内容を発表しなければならない。それまでは毎年改訂しモデルの詳細を発表していたのだが、何があったのだろうか。
実は、筆者は内閣府に再三電話し、彼らの発表するデータは、赤字国債を増発し財政を拡大すれば国の債務は実質的に減少し、財政が健全化することを示していることを指摘していた。国会議員にお願いし予算委員会や質問主意書等の形で政府にもこのことを理解させるよう努力してきた。内閣府はその動きに危機感をもったのか、何と2010年を最後にモデルの詳細を発表しなくなった。内閣府や財務省は増税推進のための活動を強力に行っている。このことは安倍首相の発言「財務省がすごい勢いで対処しているから党内全体がその雰囲気(再増税を強行すべきという)になっていた。」でもうかがえる。
筆者は以前から2017年4月からの消費増税を行った場合と行わなかった場合の両方の試算を発表せよと内閣府に要求してきたが、彼らは、消費増税延期はあり得ないからと主張し、増税延期が決まった今でも消費増税を行う場合の試算しか発表していない。これが「増税延期絶対反対」という過激思想の圧力団体である内閣府・財務省がやることだ。国民の税金で給料を貰っている公務員がこのような偏った思想を持って活動をしてよいのだろうか。当然のことながら彼らが行う試算は、客観的なものではなく、増税・緊縮財政を推進するために都合のよい結果しか出さない。
(1)金融緩和だけの経済活性化、(2)2014年の消費増税でも景気後退なし、(3)2年で2%のインフレ目標達成というアベノミクスを「理論的」に支えてきた内閣府の試算がことごとく破綻した今、歪んだ内閣府の試算を根本から考え直す時ではないだろうか。過ちを繰り返すべきでない。日銀の国債購入でマネタリーベースは400兆円を超えた。
マネタリーベースを増やせば、景気は回復し、インフレ率は上がってくるという説は間違いだということが実証され、異次元の金融緩和に加え、異次元の財政政策が必要だという考えが正しかったことが示された。今こそ異次元の財政政策でマネーを国民に渡す政策を断行して欲しい。
小野盛司
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。