インターネットが招く現代の危機

前回の記事ではインターネットの利用や、インターネット上での言論や表現活動、そしてさらにはインターネットを使っての情報収集も含めたインターネットを活用した知的活動には様々なメリットとデメリットが存在することを説明し、そして、インターネットを活用する上でその様々なメリットやデメリットについてしっかりと考えていく事が重要であると書きました。

そして、今回はその続きとして、特にインターネット上の知的活動やコミュニケーションが孕んでいる危険性について考察していきたいと思います。

セーレン・キルケゴールの現代の批判

かつて、デンマークの宗教思想家であったキルケゴールは『現代の批判』でこのよう書きました

『現代は平均しておそらく過去のどの世代よりも物知りだといえるだろう。』

ここでいう「現代」とは、もちろんキルケゴールにとっての現代(今から160年以上前のデンマーク)であって、21世紀の日本ではありません。しかし、誰も納得出来るように、情報技術の発達、最も端的にはインターネットの普及により現代のまさにこの21世紀の現代こそは過去のどの時代よりも平均するなら圧倒的なまでに物知りであるといえると思います。現代は、まさに情報が氾濫している時代であり、かつての、
「貴重な情報をどれだけ得られるか?」
が重要であった時代はとうに過ぎ去り、そして、
「どの情報が重要でどの情報が取るに足らないゴミ情報であるのかをどれだけ正確に判別できるか?」
が重要視される時代がやってきたことからもそのことがうかがい知れます。

つまり、現代において重要なのは、
「どれだけ情報や知識を頭に詰め込むか?」
ということ以上に
「どの情報が重要で、どの情報が重要でないのか?」
あるいは
「どの情報が正しく、どの情報が間違っているのか?」
を正しく見極める判断の基準と判断能力こそが求められているのです。

→ 次ページ:「正しい判断能力を養うには?」を読む

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西部邁

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