ヘリコプターマネーについての正しい考え方

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最近ヘリコプターマネーの議論が盛り上がっている。政府貨幣発行とか日銀の国債引受に関する議論が盛り上がったことはあったが、それとほぼ同じ意味のヘリコプターマネーという言葉で議論がされたことはほとんどない。この考えの提唱者はノーベル経済学賞受賞のミルトン・フリードマンであり1969年に発表された。2002年には前FRB議長のベン・バーナンキがデフレ不況対策として提唱した。実際にヘリコプターでお金をばらまくのではなく、刷ったお金が家計や企業に渡るようにする。

日本においては、わざわざヘリコプターマネーという言葉を使う必要はないのだが、ユーロ圏では事情が違う。政府貨幣発行も日銀の国債引受も政府の協力なしではできない。しかしユーロ圏は19カ国からなり、このすべての国の政府が賛成しなければ何もできない。ドイツは反対するだろうから、結局できないということだ。ヨーロッパで議論が盛り上がっているヘリコプターマネーとは、中央銀行であるECBがお金を刷って直接ユーロ圏の国民に配るという案だ。
本来、中央銀行はお金を刷って国債などの資産を買うのだが、今回のアイディアは何も買わずひたすらお金を刷ってお金を配る。それなら19カ国の政府の協力なしにでもできるのではないかと考えているのである。マイナス金利でもデフレから脱却できないのなら、そういう方法も考えるべきではないかという論理である。この方法の欠点は、もし景気が過熱したとき、売りオペしてお金を吸収しようと思っても、売るべき資産がないので売りオペができないことだ。

幸いにして、日本の場合はずっと話は単純で政府貨幣発行も日銀の国債引受も必要はなく、次のような2段階で行えば良い。第一段階は政府が国債を発行し市場で売って減税や財政出動のための資金を得る。第二段階は日銀が市場から国債を買う。この二段階で行われれば、日銀の国債引受と全く同じことが行われたことになる。しかも第二段階はすでに日銀は十分すぎるほどの規模で行ったし、現在も行っている最中である。
ということは残りは政府が国債の発行額を増やし、減税とか財政支出拡大を行うだけでよい。

そんなに簡単なことならなぜやらないのかという疑問がわく。日本は1000兆円を超える借金があり、それ以上借金はできないという反論が返ってくる。しかし、借金が1000兆円だと言っても、それが多いか少ないかはGDP比で考えないと分からない。借金のGDP比が200%を超えていて、世界最悪だという人がいる。しかし、お金が家計や企業に渡れば当然需要は拡大し、経済は活性化しGDPは増える。もちろん借金も増える。分子が借金で、分母がGDPだ。
減税や財政拡大を行ったとき、分子も分母も増加するのだが、どちらの増加速度が大きいのだろうか。マクロモデルを使って計算すると、間違いなく分母の増加速度のほうが大きくなって、国の借金のGDP比は減っていく。つまり財政は健全化するということだ。

世界中捜しても日本以外、債務のGDP比が200%を超えた国はいない。もちろん財政赤字が日本以上に深刻な国もいくらでもあったが、借金も増えるがGDPも増えるので債務のGDP比は200%にまで増加することはない。日本はデフレでGDPが増えないから債務のGDP比がこんなに増えてしまったわけで、適切な規模で景気対策を行えば普通の国のようにGDPが増え、財政は健全化していくのだ。

小野盛司

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