シールズも安保賛成派もどっちもオカシイ?~民主主義が分からない右翼と左翼~

民主主義ってなんだ?

私は、以前書きました記事(『もはや末期?民主主義を掲げながら、議論を拒否する安保法制反対派とシールズの問題点・・・』)にて、民主主義を標榜しながら、基本的な知識の取得や異なった意見を持つ人々との議論を拒否するというシールズや安保法制反対派の人々の矛盾した姿勢について批判しました。

民主主義を機能させるには?

上記記事における、京都大学教授で内閣参与の藤井聡氏の意見をまとめると、ただの多数決にあらざる民主主義を機能させるための基本的な条件を3つ挙げることが出来ます。

一つ目は、公正な議論を行うための正しい基本的な知識を身につけること。二つ目は、そうして得た正しい知識に基づき安易な極論に飛びつかないこと。最後に、三つ目は、何の責任もなく、とにかくなんでも「自由にしゃべろう」的なノリで無責任な発言を行うことなく、自身の発言の及ぼす影響について冷静に考えたうえで責任をもって発言することです。

たとえば、今回の安保法制に関しては、最低限の基本的な議論の前提として、現行の憲法解釈と憲法13条との関係性が挙げられます。これは、何度も繰り返しになってしまうのですが、現在憲法9条で武力行使と戦力の保持が条文で禁止されているにも関わらず自衛隊や個別的自衛権を保有している根拠は、国民の生命と幸福追求を最大限尊重するという憲法13条により担保されています。つまり、国家が防衛力を保持しなければ国民の生命も幸福も保障することが出来ないので、この生命幸福追求の権利を最大限保障するための手段として限定的に武力の行使(厳密には警察権の行使であるのですが、実質的には武力の行使と呼んでよいでしょう)と戦力の保持が認められているという構造になっています。また、今回新たに認められる集団的自衛権の行使も、この13条により規定されている権利を保障するためという目的に限定することにより法的安定性を確保するという論理によって成り立っているのです。

もちろん、この解釈事態を認めないという立場の方もおられるでしょうが、その場合でもそもそも、とにもかくにも「現在の状況でどのような憲法解釈がなされているのか?」という議論の基本的な前提知識を共有しなければ建設的な議論は絶対に不可能です。また、安保法制に反対している人も、少なくとも論理としては今回の集団的自衛権は(実際に適切に運用され得るのか?という問題を措いて、純粋に論理としては)一応それなりに理に適っているものであるということを認めたうえで、では、本当に今回の安保法制の条文や政府解釈や、実際に予想される運用は本当に憲法13条に規定されている権利を保障するための最低限度の武力行使に限定されているのか?そのような限定に関してしっかりと条文等で規定されているのか?といった問題について議論する必要がありました、その意味では「戦争反対!!」「戦争法案反対!!」「安倍はやめろ!!」「安倍はバカ!!」なんて叫びながら国会前で大騒ぎしてもしょうもなかったと言えるかもしれません(結果としてみれば、安保法制は無事通過しましたし、その後、特に安倍政権の支持率が著しく低下するなどといった事態も起こっていませんから)。また、同時に、「憲法守って国滅ぶ!!」「中国の脅威が!!」「対等な同盟関係のためには集団的自衛権が必要なのだ!!」といった安易な賛成論に飛びついた決して少なくない数の賛成派の方も一定の反省が必要であると思います。

結局、民主主義って多数決なの?

また、このような賛成派と反対派の戦いについて哲学者である適菜収さんラジオ番組で、次のように批判をしていました。

どういう批判なのかというと、つまり、シールズは、自民党が議席数要は数の論理様々な問題を抱えている安保法制を無理やり押し通そうとしていることに対して、「民主主義ってなんだ?」と問いかけながら批判をした。しかし、結局、じゃあそのシールズが何をやったのかといえばデモの参加人数を誇り「自分たちの主張のバックにはこれだけの数の世論がある!!これが民主主義だ!!」と結局数の論理で対抗しようとしたに過ぎない、と。つまり、彼らは数の論理で無理やり押し通そうとしている自民党のやり方を批判しながら自分たちも全く同様に数の論理に頼るという陥穽に陥ってしまったワケなのですね。まさに「ミイラ取りがミイラになる」といったところです。

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西部邁

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  1. 2016-2-24

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