安倍さん、本気で財政出動をやって下さい。

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G7の議長国となった日本がG7各国に財政出動を呼びかけている。方向性は正しいのだが、安倍さんは本気で財政出動をやる気になっているのだろうか。というのは我々日本経済復活の会は繰り返し財政出動を行うよう日本政府に求めてきた。その度に政府からは否定的な回答が返ってきた。例えば国会議員を通じ予算委員会や質問主意書などで行った質問に対する答弁等にそれは見られる。財政出動を拒否してきた理由として政府は次の2点を挙げる。

(1)国の債務が1000兆円を超え、これ以上次世代にツケを回せない。
(2)財政への信頼が失われると、金利が急上昇し国民生活に深刻な影響がでる。

しかし、G7で政府が各国に財政出動を勧めるというからには、これら(1)(2)が問題なしと判断したということだろう。

しかし、G7で財政出動を呼びかけても各国それぞれの事情があり、足並みを揃えるのは簡単ではない。例えばイタリアとは安倍首相は5月2日首脳会談を行っており、財政出動を巡って一致したということになっている。しかしイタリアは日本と違いユーロを採用しているので、通貨発行権を持っていない。ということは財政赤字幅にも国債残高にも制限が掛かっている。日本のように中央銀行が無制限にお金を刷って国債を買うことはできないのだ。

例えばユーロ導入国が実際に満たすべき基準は「国債残高がGDPの60%を下回ること」であったが、現在イタリアの国債残高はGDPの130%を超えており、更なる大規模な国債発行は躊躇するだろう。一方ドイツは第一次世界大戦後、ハイパーインフレを経験したことがトラウマになっていて、財政赤字をひどく嫌う。自国の経済状態は悪くないからこれ以上景気刺激をする必要はないという。

統一通貨である円が全国で使われている日本と比較してみると、大企業の本社が集中している東京はドイツに相当し、地方の自治体はイタリアやギリシャに相当する。税収は東京に集中するので、地方は赤字になりがちだ。そこで地方交付税交付金や公共事業などを通じてお金を地方に流して地方が赤字にならないようにしている。EUは共通通貨を採用し金融では統一したのに、そのような地方へお金を還流するシステムがない。

これでは地方は衰退するばかりだ。EU各国は主権を有し、財政は独立しているから、豊かな国は貧しい国を援助しようとしないしする義務もない。各国それぞれ自力で財政黒字化の努力をせよという。これではいつかはユーロ圏は崩壊するのではないだろうか。

アメリカといえば、やはり景気はよくてむしろ徐々に金利を引き上げている時だから、この時点で財政出動は難しい。現在、最も財政出動をしなければならないのは日本だ。独自通貨を持っているのだし、財政破綻の恐れは全く無く、誰かに遠慮しなければならないわけではない。しかも失われた20年と言われる不況が続いている。債務残高が大きいと言っても景気が回復しGDPが増えてくれば、債務のGDP比は減ってくるのでむしろ債務残高は実質的に減ってくると言える。

安倍さん、財政出動を各国に呼びかけておいて、日本は逆に消費増税をやるという恥知らずの行為はあり得ないですよね。財政出動もたった10兆円程度でお茶を濁すのではダメですよ!!

小野盛司

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