中学の教科書で緊縮財政を教える馬鹿な日本の教育

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現在使われている中学公民の教科書には次のように書いてある(例えば東京書籍149頁)。「公債(国債)は借金ですから、政府は公債を買った人に利子を支払い、元金を返済しなければなりません。安易に公債を発行すると、利子の支払いや元金の返済がたいへんですし、将来の世代に負担を先送りすることにもなります。そのため、公債の発行は慎重に行わなければなりません。」つまり今の教育制度だと中学生にまで緊縮財政が正しいのだと教えている。

しかし、もしヘリコプターマネー(ヘリマネ)を認めるなら、このように教科書に書くことは間違いだということになる。ヘリマネなら無利子無期限の国債を日銀に引受させるのだから利払いも元金返済もないからだ。

第二次安倍内閣が発足する前、安倍氏は「日本銀行(日銀)の輪転機をぐるぐる回して無制限にお札を刷る」というヘリマネを思わせる発言をしていたが、首相になってからは財務省の圧力からか、そのような発言は影を潜めた。しかし7月12日にバーナンキ前米FRB議長を官邸で会談してから、政府がヘリマネを検討しているのでは無いかとの憶測が流れた。バーナンキ氏は2002年来日しヘリマネを日本に推奨している。

政府・日銀によるヘリマネの期待が高まって一時円安株高が進んだが、黒田日銀総裁がヘリマネの実施を否定する発言が英BBCラジオで流れると一転円高株安になった。市場関係者はヘリマネは日本経済にとってプラスと認識していて、ヘリマネでハイパーインフレになることもないし、円の信認が失われることもないと信じている証拠だ。

しかし、ヘリマネの実現にはたくさんの壁がある。第一は財政規律という壁だ。これは日本経済の発展を阻害している最大の規制だ。江戸時代の為政者は賢かったから、通貨の適度の増発で巧みに経済を発展させることができたが、平成の為政者はそれができない。この財政に関する規制を緩和することこそ、日本経済を発展させるための最重要課題となる。第二は「60年償還ルール」。国債は60年で「完済」することになっている。

ただし、新たに借換債を発行して発行残高は増え続けるのだからこのルールは何の意味もないのだが、借りたカネはきっちり返さなければいけないと言うだろうし、ヘリマネのように無利子無期限の国債は想定外だと主張するのだろう。第三の壁は日銀による国債の直接引き受けが財政法で禁じられていることだ。しかし、自民党は衆参で単独過半数を持っているのだからその気になれば、議会で承認してヘリマネも可能となる。

IMFは7月19日世界の経済成長率の見通しを発表した。それによると世界全体では2016年が3.1%、2017年が3.4%の成長と予測した。日本の成長率は世界中で際立って低く、16年が0.3%、17年が0.1%と予測されている。例えば米国は16年が2.2%、17年が2.5%、ユーロ圏は16年が1.6%、17年が1.4%となっており、先進国の中でも成長率の低さが際立っている。このままデフレ脱却ができなかったら、かつて世界一豊かであった国がいずれ貧乏な国の仲間入りをしてしまう。我々の子孫に、そのような惨めな国に住まわせたいだろうか。

江戸時代の為政者は賢かった。改鋳など行い、国民が使えるお金を徐々に増やしていき経済を発展させ国民の生活を豊かにしていった。通貨増発だが、現代風に言えばヘリマネを繰り返して活用したわけだ。通貨増発の速度も節度をもって行われたため、ハイパーインフレも通貨の信認が失われることもなかった。ヘリマネが無理でも思い切った大規模補正予算を期待したい。同様な効果は期待できるのだから。

小野盛司

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