「まいったなあ。これが21世紀か。」~東浩紀氏のツイートから考えるパリテロはヨーロッパを変えるか?~

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パリのテロ事件はヨーロッパを変えるか?

11月14日のパリでのテロ事件当日、作家で思想家の東浩紀氏のこんなツイートが一部で注目を集めていたようです。

東氏は、このツイートをした後に収録された宮台真司氏のラジオ番組デイキャッチにて、このツイートをした意図について解説しています。

ヨーロッパの理想主義の終焉

東氏の今回の事件の分析はこうです。つまり、ヨーロッパはある意味でリベラルの理想の最先端を実現していた地域であり、同時に、EUというのは、このヨーロッパをの理想をさらに急激に推し進める革新的な取り組みでした。EUとはヒト、モノ、カネの移動を自由化してより自由でリベラルな共同体をヨーロッパ全体で推し進めようというある種の社会実験でした。しかし、今回の事件で、そのような自由を重視する気風は挫かれ、再びヨーロッパは各国で国境を高く設定しようとする動きが出てきています。このような変化をもって、東氏は今回のテロはヨーロッパの理想を挫き、以前より、保守的で排他的な傾向へとヨーロッパを逆戻りさせるだろうと考え、「これはヨーロッパをかえるな。」とツイートしたそうです。

EUの理想の終焉はどこで始まったのか?

私自身は、この見方に関して、一部では同意しつつも、やはり違和感はあります。確かに、今回の事件がEUをより保守的で排他的、つまり各国国民の志向をより内向きの方向へ偏差させたことは事実でしょうが、別にこれ以前段階からすでにEUにはその兆候は表れていました。

まず、一つはやはりギリシャ危機です。「ヒト、モノ、カネの移動を自由にする」と聞けば、確かに、各国間の関係が良好な牧歌的な世界を想像するかもしれませんが、現実は複雑です。自由化とは一面では各国の交流を活発化することになりますが、別の面から見た場合、各国の生活や経済を守るための様々な防御壁を取り払うことを意味します。その最も良い例がギリシャ危機です。ギリシャ危機の本質はグローバルインバランスの問題、つまり、ある国が膨大な負債や貿易赤字を抱え、その反対側に大量の輸出を行って膨大な貿易黒字を生み出す国家が出てくるという問題でした。具体的には、ギリシャが貿易赤字を積み重ね、反対にドイツのような輸出競争力の強い国家が一方的にギリシャのような国に輸出を行うことで貿易黒字を積み上げていきました。結果として、ギリシャは膨大な負債を抱えどうにもならない状況へと陥っています。

なぜ、このような問題が発生してしまったのかいうと、もちろん、ギリシャ政府が粉飾決算を行っていたことや、ギリシャが十分な競争力を持った産業を育成できなかったことなどの原因があるのですが、もう一つ、直接の原因としてEUやユーロという共通通貨の仕組みがあります。通常であれば、継続的に貿易赤字を出している国家は通貨が弱くなります。ですので、ギリシャのような国はどんどん通貨が切り下げられていって、大量に輸入を行うことが困難になり、同時に通貨安によって輸出をしやすくなるので、このような為替の変動により貿易赤字にある程度の歯止めが掛かります(もちろん、例外はあります、そして今回のユーロ危機はその例外の一つとなりました)。しかし、今回の問題はギリシャが独自通貨のドラクマではなく、共通通貨のユーロを使用していたことにあります。共通通貨ユーロの強さはヨーロッパ全体の経済力の強さを反映しますので、基本的にドイツからギリシャのようにユーロ圏内でどれだけ輸出や輸入が行われても、ギリシャが独自通貨ドラクマを使用していた場合のようにギリシャの貿易赤字が原因で通貨が切り下げられるということがありません。また、カネの移動が自由であるということは、ギリシャが貿易赤字を積み重ねても、どこかEU圏内の他の国から資金を調達しやすくなることを意味します。こうなると、ギリシャのような国でも貿易赤字の赤字分を他国からの借金で補うというカタチでどこまでも負債を拡大させながら貿易赤字の状態が継続されます。

現在のギリシャ問題は、このような負債の拡大がとうとう問題の解決が不可能な規模にまで拡大してしまったことにあります。現在では、今回のテロ事件とは無関係にギリシャのユーロ圏離脱や、イギリスのEU離脱などはすでに真剣に検討されており、ヨーロッパ全体で巨大な共同体を形成するというEUの理想の追求はすでに頓挫しており、今回のパリでのテロ事件はきっかけというよりは、それのダメ押しの決定打となったのだというふうに理解すべきでしょう。

→ 次ページ「保守化する先進国」を読む

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西部邁

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コメント

    • 根無し
    • 2015年 12月 16日

    中東の混乱に対してリベラル的「外向き」志向で居続けた結果が
    今ではないのですか。
    それによって混乱の色合いはどれほど薄まったのでしょうか。
    むしろその程度は強まり、範囲まで拡大しているのが現状ではありませんか。
    ここから舵を切るのはもはや物の道理とさえ言えましょう。
    「手を差し伸べる」といえば聞こえはいいですが
    できもしないことに手を突っ込むより「放置」する方がよっぽどよいと思われます。

    今回のカツトシさんの記事は、
    グローバリゼーションとそれに伴う改革を
    長きに渡って継続したが事は悪くなる一方、であっても
    それに逆行する意見でも言おうものなら
    「保守的・内向き・排他的」などと
    いまだに叶わぬ夢を虚空に見ながらさえずっている連中に重なって見えてしまいます。

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