『日本式正道論』第五章 武士道

第十四節 新渡戸稲造の武士道

 新渡戸稲造(1862~1933)は、岩手生まれの教育者で農政学者です。国際連盟事務次長や太平洋問題調査会理事長として国際関係に取り組みました。
 新渡戸稲造の『武士道』には、〈武士道はその表徴たる桜花と同じく、日本の土地に固有の花である〉とあります。この武士道は、〈道徳的原理の掟であって、武士が守るべきことを要求されたるもの、もしくは教えられたるものである。それは成文法ではない〉と語られています。武士道は、〈数十年数百年にわたる武士の生活の有機的発達である〉というのです。
 ただし、新渡戸稲造の『武士道』は、キリスト教道徳を武士の中に見出したものとの指摘もあり、本来の武士道とは別物かもしれません。例えば、〈武士道の窮極の理想は結局平和であった〉という言説などは、元来の武士および武士道の在り方とは異なっています。
 稲造は、〈私は武士道に対内的および対外的教訓のありしことを認める。後者は社会の安寧幸福を求むる権利主義的であり、前者は徳のために徳を行なうことを強調する純粋道徳であった〉と述べています。その武士道に対し、最後の章では〈武士道は一の独立せる倫理の掟としては消ゆるかも知れない、しかしその力は地上より滅びないであろう〉と語られています。


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西部邁

木下元文

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投稿者プロフィール

1981年生。会社員。
立命館大学 情報システム学専攻(修士課程)卒業。
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