『夢幻典』[伍式] 輪廻論

解説

 仏教における阿毘達磨(アビダルマ)という教説では、輪廻転生に関して「三界」・「五趣」・「四生」といった考えが示されています。
 「三界」とは、欲界・色界・無色界の三つの世界です。欲界は生物の本能的欲望の世界であり、色界は物質の世界であり、無色界は物質の存在しない世界です。「五趣」とは、地獄・餓鬼・畜生・人間・天という五つの迷いの世界です。阿修羅を加えて「六趣」あるいは「六道」と呼ばれることもあります。「四生」とは、輪廻して生まれる四つの種類のことです。胎生・卵生・湿生(湿気から生まれるもの)・化生(忽然として生まれるの)の四つです。

 原始仏教では、輪廻転生からの解脱が鍵となっています。この『輪廻論』では、ゴータマ・ブッダの解脱の思想を否定しています。ゴータマ・ブッダは輪廻からの解脱の方法を示しましたが、そんなことは原理的に不可能だと思われるからです。
 その一方で、ジャイナ教のサッレーカナーは(個人的に選択肢には入りませんが)思想的には高く評価できるでしょう。サッレーカナーでは、涅槃に至った人はただちに完全な断食に入り、そのまま死ぬそうです。これは社会的には困りものですが、思想的には一つの到達点であることは間違いないと思われるからです。根本的な生存欲が無くなれば、生きようとは考えなくなりますから、そのまま朽ち果てて死ぬしかありませんから。
 そういった既存の思想を参考にし、ここでは輪廻転生という概念を軸に、思想の行きつく先の多様性を論じているのです。


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西部邁

木下元文

木下元文

投稿者プロフィール

1981年生。会社員。
立命館大学 情報システム学専攻(修士課程)卒業。
日本思想とか哲学とか好きです。ジャンルを問わず論じていきます。
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