『夢幻典』[陸式] 縁起論

解説

 ここの縁起論では、仏教における世界観がかなり強く反映されています。
 仏教には、四聖諦という考えがあります。まず、世界は苦しみに満ちているという真理(苦諦)が示されます。次に、苦しみには原因があり、それは煩悩であるという真理(集諦)が続きます。そこで、苦しみの原因を滅した境地が涅槃の真理(滅諦)として示されます。最後に、苦しみを滅するための道が八正道であり、それは中道であるという真理(道諦)が示されます。
 八正道とは、正見(正しい見解)・正思惟(正しい思惟)・正語(正しい言葉)・正業(正しい行い)・正命(正しい生活)・正精進(正しい努力)・正念(正しい思念)・正定(正しい精神統一)から成っています。
 岩波文庫の『ブッダの真理のことば 感興のことば』の『ダンマパダ』から、参考になる箇所を引用してみましょう。

 さとれる者(=仏)と真理のことわり(=法)と聖者の集い(=僧)とに帰依する人は、正しい智慧をもって、四つの尊い真理を見る。――すなわち(1)苦しみと、(2)苦しみの成り立ちと、(3)苦しみの超克と、(4)苦しみの終滅におもむく八つの尊い道(八聖道)とを(見る)。

 苦しみをどうするかということは、非常に大きな問題です。その問題に対し、曲がりなりにも何らかの回答を示し得たということで、仏教には大きな価値があると言えるでしょう。ただし、その回答に一定の評価を与えながらも、その回答だけでは満足できないような人もいるでしょう。そういった人は、仏教の回答を参照しながら、別の回答の可能性を探っていく必要が出てくるでしょう。
 ですから、ここでは仏教による回答を利用した、別種の回答になっているのです。そして、この回答も同様に、他者にとって利用可能なものなのです。


※本連載の一覧はコチラをご覧ください。

ページ:
1

2

西部邁

木下元文

木下元文

投稿者プロフィール

1981年生。会社員。
立命館大学 情報システム学専攻(修士課程)卒業。
日本思想とか哲学とか好きです。ジャンルを問わず論じていきます。
ウェブサイト「日本式論(http://nihonshiki.sakura.ne.jp/)」を運営中です。

【ASREAD連載シリーズ】
思想遊戯
近代を超克する
聖魔書
漫画思想
ナショナリズム論

Facebook(https://www.facebook.com/profile.php?id=100007624512363)
Twitter(https://twitter.com/moto_nihonshiki)

ご連絡は↓まで。
nihonshiki@nihonshiki.sakura.ne.jp

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 2014-12-24

    『永遠のゼロ』を私はこう見る

     当サイトに、藤井聡氏のエッセイ「永遠にゼロ?」(2014年9月9日 三橋経済新聞掲載)に対する木下…

おすすめ記事

  1. 第一章 桜の章  桜の花びらが、静かに舞っている。  桜の美しさは、彼女に、とて…
  2. SPECIAL TRAILERS 佐藤健志氏の新刊『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は…
  3. SPECIAL TRAILERS 佐藤健志氏の新刊『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は…
  4.  現実にあるものを無いと言ったり、黒を白と言い張る人は世間から疎まれる存在です。しかし、その人に権力…
  5. はじめましての方も多いかもしれません。私、神田錦之介と申します。 このたび、ASREADに…
WordPressテーマ「SWEETY (tcd029)」

WordPressテーマ「INNOVATE HACK (tcd025)」

LogoMarche

TCDテーマ一覧

イケてるシゴト!?

ページ上部へ戻る