近代を超克する(21)対リベラリズム[4]ホッブズとロックとルソー

ルソーの自由

 ルソーの自由の観念について、『社会契約論』をまとめると次のようになります。
 社会契約により、人間は生来の自由を失い、社会的自由と精神的自由を獲得します。生来の自由を失うことで、すべてに対する無制限の権利を喪失します。社会的自由は一般意思から制限を受け、精神的自由は自分の制定した法への服従を意味します。
 一般意思は常に正しく、公共的利益を志向します。一般意思の行為は法となります。全員一致の同意を絶対に必要とする法が、社会契約です。設立している国家に住んでいる人は、社会契約の同意が成立しているとみなされています。
 一般意思は、国家の中に部分社会がなく、各市民が自己の意志に従い意見を述べることで表明されます。その際、意志が一般意思であるためには、投票者を結合する共同利益が必要になり、投票者の数は問題になりません。
 さらに『人間不平等起源論』や『エミール』の自由を加味すると、人間は自由によって同意や抵抗を為し、自由な人間は自分のできることを望み、自分の好きなことを行なうとされています。
 ルソーの自由を考察すると、意志が自由であるため、キリスト教における自由意志の影響下にあることが分かります。その上で、社会契約における一般意志において、社会的自由と精神的自由の両方が成り立つことが示されています。これは、危険な考えであり、間違っています。
 一般性とは、各人の意見が一致していることでも、各意見の過剰と不足を相殺して除去した差の合計のことでもありません。異なる意見間の平衡や調和の中に、一般性は生まれるのです。国家は、国家内にいくつかの部分的な意見を持ち、それらを平衡させ調和させることで安定を得るのです。各市民が自己の意志だけに従って意見を述べるのではなく、各人の意志も考慮し、特殊な条件や状況も想定して意見を述べることが肝心なのです。
 同様に国際社会は、国家が国家ごとの思想を考慮し、国家間において調整し合うことで、安定状態を保つことができるのです。


※第22回「近代を超克する(22)対リベラリズム[5]アダム・スミス」はコチラ
※本連載の一覧はコチラをご覧ください。

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西部邁

木下元文

木下元文

投稿者プロフィール

1981年生。会社員。
立命館大学 情報システム学専攻(修士課程)卒業。
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