産経新聞社からの訂正依頼について戦略的に考える

産経新聞に有利な展開へ誘導

 訂正された記事を見ていただければ分かる通り、今回の訂正依頼はまったく正当なものです。ですから、この訂正を依頼したこと自体については、何ら非難を受ける筋合いのものではありません。
この訂正依頼に関岡氏が応じなければ、関岡氏は他人の間違いについては非難しますが、自身の間違いへの非難は受け付けない人物だということになります。一方、関岡氏が訂正依頼に応じれば、今回の一連の騒動は、関岡氏の誤解に基づいた点が多々含まれていたことが明らかになります。
 誠実に訂正に応じていただけたことから明らかなように、今回の騒動については、コミュニケーション不足による認識のズレが大本にあるのです。読者の方々には、訂正依頼に関する応答部分をしっかりと読んでいただけるようお願い申し上げます。
 今回の件に関してはスケジュールの都合もあり、産経新聞側から十分な説明をしきれていなかった点も否めません。今後は十分なコミュニケーションを心掛け、このような誤解から大きな問題とならないように注意いたします。お騒がせして申し訳ありません。

ASREADに有利な展開へ誘導

 今回の一連の問題においては、フジサンケイグループの報道機関からの理不尽な扱いを見過ごして来たことが、このような事態を招いてしまった大きな要因だと考えることができます。
 ハインリッヒの法則というものをご存知でしょうか? 一つの重大な事故の裏には29の軽微な事故があり、さらにその裏には300の「ヒヤリハット」(ヒヤリとしたり、ハッとする危険な状態)があるという経験則のことです。災害防止の基礎として活用されることが多い考え方ですが、もっと幅広い分野にも応用可能です。
 大メディアと一言論人の間には、大きな力の差があります。編集権を振りかざした行為に沈黙をもって返せば、大メディアから意のままにできる駒だと見なされる危険性も出てくるでしょう。
 そのため、ヒヤリとしたことや、ハッとしたことの具体例を挙げ、その真偽を問うことには意味があるのです。その中には、当然ながら誤解や杞憂も含まれているでしょう。そのことを指摘されたら、それを素直に認めて真相を明らかにしていけばよいだけの話です。その過程において、疑うべきところが絞られてくるはずです。最後には、何も不審なところはなかったという結論に至るかもしれませんし、何らかの企みや過失が明らかになるかもしれません。そのどちらかへと至るためには、問題を提起して議論を進める勇気が必要になるのです。大メディアを敵にまわして仕事を失う恐怖感から、物事を曖昧にしたままでは、建設的な結論にたどり着くことができなくなってしまうのです。
 産経新聞の側からの訂正依頼に対し、関岡氏は誠実に訂正に応じました。少なくとも現時点でASREAD側は、論点そらしをしたり、問題を引き延ばすことで過失を曖昧にするような態度をとってはいません。ASREAD側の対応に対し、産経新聞側の対応はどのようなものであるのかは読者の判断に委ねられています。産経新聞側は問題の本質には答えずに、瑣末な点を強調することで論点そらしをしているのだと思う読者も出てくるのではないでしょうか?
産経新聞側がこれ以上の不信感を読者に与えないためにも、訂正依頼の最後に、今後の対応についても記載しておくべきでした。現段階では、産経新聞側は、恣意的に論者の主張の方向性を変えてしまうことは、編集権によってニュース性の高いところを記事に盛り込むことで正当化できると考えていると見なさざるをえないからです。

戦略的に考えるということ

 以上のように、各陣営を有利にするための二つの戦略を示しました。ここでは二つとも載せましたが、片方だけを記載することで、読者の意見をある程度まで誘導することが可能になるのです。つまり、事実を曲げることなく、事実を恣意的に利用することで、有利な展開へ誘導できるということです。
 世論誘導は、マスメディアの得意技です。大メディアの世論誘導に引っかからないためには、とにもかくにも自分で納得のいくまで考えてみることが重要です。その上で、他者と建設的な議論をしていくしかないのです。
 今回の一連の流れを考える上で、参考として『論語』の次の言葉を挙げておきます。

子の曰わく、過ちて改めざる、是れを過ちと謂う。

 あまりにも有名ですが、孔子は過(あやま)ったとしても改めないことが本当の過ちだと言ったという話です。完全な人間など存在しないのですから、間違えることは誰にも起こり得ることです。大事なことは、間違えたときに、どのような行動をとるかにかかっているのです。
 私は当然ながら、産経新聞などの新聞報道が正しくなることなどありえないという暴論に与するつもりはありません。新聞報道が正しい場合も、正しくない場合もあるでしょう。その正しさは、検証と議論によって確かめてみようと言っているだけの話です。ニュース性が高いところを記事に盛り込もうとする姿勢も、報道機関なら当たり前です。ただ、それによって主張の方向性を変えてしまうことはまずいと言っているだけです。
 私は、日本を移民国家にさせないために議論を展開しています。そのためにできることがあるなら、淡々と行っていくつもりです。
 今回の一連の議論においては、現段階においても少なくない効果が得られたと思います。産経新聞の報道について、特に移民問題について警戒しておくべきことが明らかになったからです。
 現在、慰安婦問題などで産経新聞は朝日新聞への非難を強めているように見えます。その際、この問題が原因で「お前が言うな」とならないように、さっさと訂正すべきところはしておくべきでしょう。

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西部邁

木下元文

木下元文

投稿者プロフィール

1981年生。会社員。
立命館大学 情報システム学専攻(修士課程)卒業。
日本思想とか哲学とか好きです。ジャンルを問わず論じていきます。
ウェブサイト「日本式論(http://nihonshiki.sakura.ne.jp/)」を運営中です。

【ASREAD連載シリーズ】
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