グローバル化は「日本の発展途上国化」をもたらす
- 2013/12/16
- 文化
- 英語公用語化
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「グローバル化は時代の流れで、止められない」と、よく言われます。そして、日本においても「グローバル人材」が求められるとされ、教育の「英語化」など、色々な取り組みが行われています。しかし、グローバル化は本当に「歴史の必然」なのでしょうか。日本が「グローバル化」しないと、「生き残れない」のでしょうか。
フィリピンが「発展途上」から抜けられないのはなぜか?
歴史を振り返ってみると、グローバル化は新しい現象ではないことが分かります。「ヒト、モノ、カネ」の国境を越えての活発な移動という意味でのグローバル化は、過去にも何度も起きたことがあります。
私はフィリピンで生まれ育ったのですが、フィリピンはもっとも「グローバル化」してきた国のひとつだと言えます。我が国は、400年ぐらいスペインやアメリカの植民地でした。植民地支配は、基本的に植民地の資源の搾取が目的だったのです。考えれば当たり前のことです。スペイン人は、「フィリピン人のために」フィリピンを支配していたのではなく、スペイン人のために支配していたわけです。アメリカも同様、アメリカのためにフィリピンを統治していたのです。
スペイン植民地時代、フィリピンはアジアとヨーロッパの間の貿易の中継点でした。アジア大陸の産物をヨーロッパに運び、ヨーロッパの産物をアジアに運ぶ、いわゆる「ガレオン船」がフィリピンのマニラとメキシコのアカプルコを往復していました。この「ガレオン貿易」は、スペイン人のためにかなりの利益を生み出していたのです。
しかし、そうした状況のなかで損していたのが、言うまでもなく、フィリピンの原住民でした。アジア大陸とヨーロッパ大陸の間の貿易でかなり儲かっていたため、スペイン人はフィリピン国内の市場や産業をあまり開発する気にはならなかったのです。
19世紀初頭メキシコの独立に伴い、ガレオン貿易が終焉を迎えて、フィリピンを支配していたスペイン植民地政府が、国内の産業の開発により力を入れることになるのですが、それは主に輸出のための産業化だったのです。多くの農地が、アメリカやヨーロッパなどに輸出するためのサトウキビやマニラ麻やタバコなどの商品作物の生産のために集積されました。そのため、土地所有が集中し、大土地所有制度が確立され、多くの農民が小作農家となったのです。またも外国人が儲かり、原住民が損する構図ができたわけです。そして、今日のフィリピンにおいても、大地主が存在しており、「農地改革」の問題が未だに解決されていません。
フィリピン独立革命、米西戦争及び米比戦争を経て、支配者がスペイン人からアメリカ人に替わったが、原住民がまたも外国人に搾取される羽目になりました。スペインと協力し、巨万の富を築き、高い社会的地位を手に入れたフィリピンの「エリート」が新しい支配者とも協力することになり、アメリカ向けの商品作物の生産などが続きました。また、フィリピンをアメリカの工業製品の市場として開発するため、アメリカがフィリピン人に英語教育を施し、「アメリカ志向」を吹き込んだのです。フィリピンとアメリカの経済関係は、「フィリピンからサトウキビをアメリカに輸出し、アメリカからコカ・コーラを輸入する」ということになりました。そして、第二次世界大戦後、フィリピンがアメリカから独立した後も、両国間に交わされた「不平等条約」によりフィリピン経済のアメリカ依存がしばらく続いていました。
飛んで80年代に入ると、フィリピンの対外負債が膨らみ、「新自由主義」のとりでとして知られている国際通貨基金(IMF)及び世界銀行の指示に従って、フィリピン政府が緊縮財政を遂行し、国家予算の大半を借金返済に割り当てたのです。そのため、国内のインフラ整備が遅れて、産業化がなかなか進まなかったのです。90年代に入ると、フィリピンはまたもIMFなどに従って、さらなる「規制緩和」や「自由化」を実施し、海外マネーがフィリピンに流れ込み、数値的に高い成長率を見せるのですが、90年代後半のアジア通貨危機のときに、こうした資本が一気に引き上げ、フィリピン経済が大打撃を受けることになってしまいました。
グローバル化は「日本の発展途上国化」をもたらす
上記にてフィリピンが経験してきた「グローバル化」について簡潔に記述しましたが、グローバル化によってフィリピンが「発展途上」という状態を延々と抜けられないでいることを察知していただけるかと思います。今日の日本において、海外からの資本が国内の市場により入りやすくするようになるための取組が色々と行われていますが、それが結局日本の「発展途上国化」という結果をもたらすことにならないように願ってやみません。
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