フィリピン人からみた「永遠の0」
- 2014/9/17
- 文化, 歴史
- マッカーサー, 永遠の0
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映画の見方は人それぞれ
映画、音楽、絵画などのような「アート」の作品が人にうけるかうけないかは、人それぞれの主観にかかっていて、極めて個人的なものです。「私はバッハが好き。ポップスしか聞かないような人は教養がない」のようなことを言う人をたまに見かけますが、そういう人は英語で「snob」と言われます。辞書には「(自分の愛好する学芸・趣味などを至上のものと考え鼻にかける)えせインテリ,通ぶる人」(研究社新英和中辞典)とあります。とにかく、特定のアート作品に対しての評価は、他人に押し付けるべきではありません。藤井聡教授は、「永遠の0」に関して、ご一家の感想を以下の記事に述べました。
藤井先生の論評も面白いと思いますが、先生がおっしゃるように、こういうアート作品に対してのリアクションはあくまでもパーソナルなものであり、人に強要するようなことではありません。
「とはいえもちろん,映画のミカタは人それぞれ,他の方々に我が家の映画解釈を無理強いは一切いたしません.」
すなわち、藤井先生は、「snob」ではありません。「そういう見方もありますね」で終わる筈の話ですので、こんなことで藤井先生を批判するような者がいるとすれば、○○としか言いようがないと思いますし、延々と論争することも不毛です。
ただ、映画に出てくる主人公の奥さんのような綺麗な方なら私も「告白」したのかもしれませんが(笑)。
映画「永遠の0」を評価すると左翼か
それはさておき、私は「永遠の0」が好きです。一言でいうと、面白かったからです。私は「平和主義」的な「左翼」思想の持主でも何でもなく、自衛のためなら場合によって戦争は致し方ないと思っています(これこそ「グローバルスタンダード」ではないでしょうか)。そして、「大東亜戦争」は自衛の戦争だったと認識していますので、日本が負けたとはいえ、日本軍が勇敢に戦ったことを記憶から消されてはならないと思います。また、映画や本などでその功績をたたえ続けるべきだとも思っています。
私は子供のころ、フィリピンでアメリカの戦争ドラマ「コンバット!」をいつも見ていました。もちろん、このドラマではアメリカ兵は「ヒーロー」でドイツ兵はみんな「悪魔」になっているのです。私はそのとき、ノルマンディーに上陸したアメリカ兵がフランス人女性をレイプしていたという話などは聞いたことはなかったのです。
「解放者」米兵、ノルマンディー住民にとっては「女性に飢えた荒くれ者」 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
どんな戦争映画を見ても、やはりアメリカは「正義の味方」として描かれ、ドイツや日本は映画スター・ウォーズのダース・ベイダー軍団に匹敵する「悪の帝国」だ、というイメージが刻み込まれたのです。
フィリピンの歴史の教育も同じ調子で行われました。フィリピンを置き去りにして「アイ・シャール・リターン」と言ったマッカーサー将軍がなぜか英雄の中の英雄として扱われるのです。その彫像がレイテ湾に立っています。
http://www.manila-shimbun.com/image.php?file=152392l.jpg&pass=85f49501476c096b45aea59667a99829
映画「永遠の0」は日本が悪の枢軸などではなく、「人間だった」ことを伝えてくれた。
とにかく、日本側には戦争を始めるに当たって何一つ道義的な理由はなく、アメリカが完全に「ピュア」な動機で日本に対して戦ってくれた、という構図が、映画、文学、教育の影響で知らないうちに刷り込まれるわけです。カトリックで禁止されている自殺行為をするような「カミカゼ」がもってのほか。(とはいえ、フィリピンにも戦闘機のゼロ戦ファンが結構いたと思います。うちの叔父もゼロ戦のプラモデルを部屋に飾っていました)。
というわけで、「永遠の0」は、「カミカゼも人間だった、しかも勇敢に戦ったのだ」と思わせてくれたのです。アメリカに影響された教育を受けた私が、本当に思いつくこともできなかった思考を抱かせる効果があったわけです。フィクションとはいえ、「永遠の0」は今までの「カミカゼは悪魔だ」という「フィクション」を払拭する効果があって、それだけでも評価に値すると思います。そして、「フィクションをフィクションで払拭した」後、考える視聴者は本当の歴史に興味を持ち、調べるようになるかもしれません。
実際に私は、やっとのこと、日本軍が残した手紙や遺品を博物館などで見たりするようになりました(「永遠の0」を見る前からですが)。今までの「日本軍が悪魔だった」を前提にしている歴史教育を受けた人は、普通はそういうことに興味を持たないと思います。「永遠の0」を見て、遊就館などに足を運ぶ人がちょっとでも増えればとても嬉しいことだと思います。
以上が私にとっての「永遠の0」に対する個人的な感想であり、決して他人に無理強いするようなものではありません。
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