近代を超克する(11)対デモクラシー[4] マキャヴェリ

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 ニッコロ・マキャヴェリ(Niccolò Machiavelli, 1469~1527)は、イタリアのルネサンス期の政治思想家であり、フィレンツェ共和国の外交官です。著書である『君主論』および『政略論』(ローマ史論、リウィウス論、ディスコルシ、などとも訳される)から、マキャヴェリの考え方を参照していきます。

『君主論』の君主

 『君主論』では、強力な君主の出現を期待して、君主のあり方が説かれています。
 そこでは国や領土が、共和国と君主国に分類されています。君主国は、血筋が長く続く世襲君主国と、新たに生まれた君主国に分類されています。国の重要な土台としては、法律と武力が挙げられています。
 正当な君主については、領民に好感をもたれることが語られています。貴族たちを失望させず、民衆を満足させ、安心して暮らせるように腐心してきた歴史があるからです。このことは、重要な君主の心がけだと語られています。新君主については、行動の力量(ヴィルトゥ)が重視されています。力量(ヴィルトゥ)は、運(フォルトゥナ)と並ぶ『君主論』のキーワードです。

『政略論』の政体の分類

 マキャヴェリの『政略論』では、賢明な学者たちの意見を参照し、六つの政体の種類が提示されています。

(1)君主政
・よき政体。
・容易に僭主政へと堕落する。
(2)貴族政
・よき政体。
・簡単に寡頭政へと堕落する。
(3)民衆政
・よき政体。
・たちまち衆愚政へと堕落する。
(4)僭主政
・有害な政体。
(5)寡頭政
・有害な政体。
(6)衆愚政
・有害な政体。

 よき政体はどれも堕落しやすいため、その政体を維持できるのは束の間だとマキャヴェリは述べています。
 ちなみに『政略論』においては、共和国と君主国の違いが、平等と不平等の原則の違いから説明されています。その社会の原則によって、どちらかを選ぶべきだというのです。

『政略論』の混合政体

 マキャヴェリは、君主政と貴族政と民衆政という三つの政体の持つ性格のいずれをも含む政体を、もっとも安定して堅実な政体だと判定しています。それぞれの要素は、互いに牽制し合うからです。これは、古代ローマの共和政を参考にした見解です。
 ここには、世の中の出来事は、一つの悪を除くと別の都合の悪いことが起きるという認識があります。他にも、どうすればより実害が少なくなるかという視点があります。完全無欠で何一つ不安がないようなものは、この世の中にはありえないということです。このような考え方は、非常に重要だと思われます。
 また、危急存亡のときには、臨時独裁執政官などの権威が必要になることが指摘されています。ここに、『政略論』と『君主論』をつなぐ鍵があります。混合政体を理想としながらも、非常事態には、危機に立ち向かうために君主の力量が必要となるからです。

『政略論』の人と法

 『政略論』における人と法についての考えも重要です。
 人民が健全であれば国家は保ちますが、人民が腐敗していればどのような法律が整備されていても何の効果もないと語られています。その上で、どのような政体においても、それが長期に存続するためには法律によって秩序づけられていなければならないことも語られています。
 マキャヴェリは、昔から長期間にわたって人々が慣れ親しんできた法律や制度や習慣を重視しています。それを破って意のままに行動を起こすとき、それが君主であれ人民であれ、国家は破滅へと突き進むことになるというのです。

マキャヴェリの祖国

 マキャヴェリは、祖国の護持を第一として論じています。どのような辱めを受けようと、どのような栄光を受けようと、どのような手段を使ってでも祖国を護ろうとした人物がマキャヴェリなのです。
 そのために彼は、『政略論』で堅実な混合政体を推すとともに、国家の危機に際して必要となる強力な君主を『君主論』で求めているのです。
 マキャヴェリの意見は、かなり過激なものもあり、各意見について詳細な検討が必要ですが、大枠でその政治論には参照すべき点が多く含まれています。混合政体と強力な君主をともに推奨することは、矛盾でもなんでもなく、明晰に思考すれば共に成り立つ二つの方法論であることが分かります。政治において、マキャヴェリの意見は今もなお非常に有効だと言えるでしょう。


※第12回「近代を超克する(12)対デモクラシー[5] ホッブズとロック」はコチラ
※本連載の一覧はコチラをご覧ください。

西部邁

木下元文

木下元文

投稿者プロフィール

1981年生。会社員。
立命館大学 情報システム学専攻(修士課程)卒業。
日本思想とか哲学とか好きです。ジャンルを問わず論じていきます。
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