以上のように、TPPとは、自由貿易という麗しい建前に名を借りたアメリカ(の金融業界、投資家、富裕層)の経済帝国主義的侵略以外の何ものでもありません。はじめの四か国で交渉が進められていた時点では、知的財産、ISDS条項、金融、保険、医療制度の自由化などはメインテーマとして取り上げられてはいなかったのです。
さて何とも情けないのは、こうした実態を知ろうとせずにアメリカのお先棒担ぎを演じている日本の政治家、官僚、そしてそれを正しく伝えようともしないマスコミの体たらくです。ここには、経団連など、効率的経営と利潤だけを重んじ、公共心のかけらもない財界の思惑も大いに絡んでいることでしょう。
アメリカの社会実態を少しでも見れば、それが日本の良き伝統とまったくかけ離れているばかりでなく、人種差別、過激な競争、貧富の格差、医療の貧困、治安の悪さなどに満ち満ちていることがすぐにわかるはずです。それなのに、いったいどうしてこれほどアメリカ式経済システムを導入することが、国民の幸せにつながるとわが国の主流勢力は信じ切っているのでしょうか。それもこれも、敗戦後遺症の産物なのでしょう。
大国・日本は、アメリカ・コンプレックスから一刻も早く脱して、交渉に参加している弱小国の懸命に抵抗する姿を見習ってほしいものです。弱小国の期待を裏切るようでは、あれだけの敗戦の辛酸をなめて這い上がった大国の資格がないではありませんか。
ここまで見てくれば、TPP締結によって、政治外交関係としての日米同盟が強化され、それが東アジアの安全保障に貢献するなどという考えが妄想でしかないことは明らかでしょう。なぜなら、何度も繰り返すように、TPPとは、アメリカの一部富裕層が力にものを言わせて自分たちだけの利益を強引に増進させようとすることを狙った条約であって、それは日本の共同体的な社会慣習を根底から破壊する不平等条約でありこそすれ、国家としての日本とアメリカとの外交的・軍事的関係を密にするものではまったくないからです。
いまさら言っても遅いでしょうが、安倍首相にはまず、この妄想からいいかげんに覚めてもらいたい。それでないと、「戦後レジームの脱却」はおろか、まさに「戦後レジーム」にずぶずぶにはまり続けることになるでしょう。
潰れろ、潰れろ、TPP。潰れないなら、撤退だ。
《参考》
中野剛志・編『TPP 黒い条約』
まつだよしこ「TPPハワイ閣僚会議を振り返る」 http://asread.info/archives/2228
朝日新聞デジタル http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40835
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