日本人よ、国連信仰から脱却せよ(その2)

 6月17日付の拙稿「日本人よ、国連信仰から脱却せよ(その1)」の冒頭部分で、筆者は次のように書きました。

 2016年4月19日、国連人権理事会の特別報告者、デービッド・ケイなる人物が記者会見し、「日本の報道の独立性は(政府の圧力によって)重大な脅威にさらされている」と述べました(産経新聞4月23日付)。この人物は、国会議員や報道機関関係者、NGO関係者らの話を聞いてこう判断したそうですが、いったい誰に聞いたんでしょうね。だいたい想像はつきますが。
 それにしても、日本ほど言論や報道の自由が許されている国が世界のどこにありましょうか。許され過ぎて、まさに反日パヨクによる偏向言論や偏向報道、経済問題や国際関係に対する無知が思うざまのさばっているではありませんか。

 しかしその後、ケイ氏が記者会見で、単に政府の圧力による報道機関の危機を訴えただけではなく、日本のマスコミの政府からの非自立的な姿勢を批判し、記者クラブの廃止や報道監視のための独立機関の設立をを提案していることを知りました。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yanaihitofumi/20160426-00057026/
 このケイ氏の提案に関しては、それが報道関係者の責任をより強く自覚させる効果を持つことを保証するものであるかぎりにおいて、ほぼ支持することができます。日本のマスコミは、たしかに右から左まで、だらしない御用マスコミと化している側面(たとえば消費増税肯定、大本営発表的な景気判断の垂れ流し、TPPや規制緩和路線に対する無批判、財務省発「国の借金一千兆円」説のデマのしつこい流布)を否定できず、インターネット上においてたびたびその姿勢を批判されているからです。しかもこの部分は、大部分のマスコミが意図的に報道しなかったようですが、それは事実報道を使命とする報道機関として許されてはならないことです。
 以上の点について、上記引用部分には、産経新聞の記事を鵜呑みにして論じた筆者の軽率ぶりがうかがえます。すでに公開した記事なので削除はしませんが、この場で新たに、引用部分のように安易には決めつけられないことを表明し、読者のみなさまにお詫び申し上げます。

 そのうえで、国連の人権理事会その他機関のこの種の日本への干渉が最近とみに目立ち、その背景に中共、韓国、および日本の反日勢力の存在があるに違いないという筆者の確信に関しては、ここで改めて強調しておきたいと思います。たとえば先の記者会見記事によると、ケイ氏は同時に放送法第四条の廃止を提案していますが、この提案は、明らかに度を越した内政干渉(おせっかい)であり、国家主権を脅かすものです。なぜならば、放送法第四条は誰が読んでも、この国の秩序と平和を維持するために、放送機関が持つべき当然の責任と倫理を課したものであり、憲法第12条後段の「又、国民は、これ(国民の自由及び権利――引用者注)を濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」という規定を放送機関にそのまま適用したものだからです。

 放送法第四条第一項:放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

 こういう倫理規範が国家の名で謳われていることは非常に大切であるにもかかわらず、その廃止をなぜケイ氏は主張するのか。ここからは筆者の想像になりますが、国連人権理事会なる機関が、おおむね三つの力学のアマルガムをその中核の精神としているからだと思われます。
 一つは、個人や民間組織の自由・権利を至高のものとして掲げる欧米的な理念の力、二つ目は、少数民族尊重という建前に立った多文化主義の力、そして三つ目は、これらをひそかに利用して日本の統治を弱体化させようとする中、韓、国内反日勢力です。
 最後のものについては、前期記事で詳しく述べたとおりです。第一と第二の力だけを国連の理想として崇めると、そこに第三の力が強力にはたらいていることが見えなくなり、お人好しニッポンはじわじわと自分の国の主権を侵害されていくのを拱手傍観していることになるわけです。

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西部邁

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