ハイパーインフレを心配する時代は終わった

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 「国の借金が1000兆円を超えたから、もうハイパーインフレしかない」とか、「ヘリコプターマネーならハイパーインフレだ」とか「財政規律を守らなければハイパーインフレだ」とか、多くの日本人はハイパーインフレ恐怖症だ。しかし、ハイパーインフレを恐れで緊縮財政を続けたためにデフレから抜け出せなくなって国が急速に貧乏になっているというのが現実であり、このことは笑い話として世界的に永く語り継がれることになるだろう。

 現在の日本のように物余りで政治的に安定した国ではハイパーインフレなどあり得ない。第一次世界大戦に敗れたドイツは、支払い不可能な1320億金マルクもの賠償金を求められた。それだけでなく、フランスとベルギーは軍を派遣し、ドイツでも有数の工業地帯であるルール地帯を占領してしまった。ただでさえ戦争で生産能力が落ちているドイツで、ルール工業地帯まで没収されたわけで、失業者は町にあふれ、物不足でインフレとなった。
 ここまでくるとフランス軍はやり放題で、帝国銀行が所有していた128億マルクの金を略奪し、ミュルハイム国立銀行支店に保管されていた未完成の紙幣をフランス軍が奪い、これを完成紙幣にして流通させた。中央銀行であるライヒスバンク自体が賠償問題の解決の一貫と考えられていたから連合国により国際管理されていた。
 その審査機関である評議員会の14名のうち、半数の7名は外国人(英国、フランス、イタリア、ベルギー、米国、オランダ、スイスから各1名)が任命され、発券業務の監督機関としての発券委員も外国人評議員が任命された。そしてこのライヒスバンクが政府から独立し、お金を刷りまくってハイパーインフレになった。

 ライヒスバンクはドイツ政府が発行した国債を大量に買った。それだけでなく、私企業の手形の割引も行った。例えば、自分の会社で1億マルクの手形を勝手に作ってライヒスバンクに持って行けば、現金にしてもらえるのだ。こんなことをしていれば、ハイパーインフレになるのは当たり前だろう。

 現在の日本でも日銀がお金を刷って国債を買っているのだが、刷ったお金が国民の可処分所得を直接増やしているわけではない。そのお金を借りて使って下さいと言っているだけで、ドイツの例とは全然違う。物余りの時代、100円ショップやデパートの商品が全部売り切れて、闇市でしか物が手に入らないような時代が近く来ようとしてはいないことくらい誰にも分かるだろう。つまりハイパーインフレは現在の日本には来ないということだ。

 8月30日の日経の「大機小機」に「日銀総裁が人工知能だったら」という論説が載った。人工知能ならもっと論理的な行動をするだろうし、デフレ脱却を目指しながら消費増税をしないことには「どえらいリスク」があるなどと発言しないだろうとある。筆者が長年主張してきたことは、もっと過激で日銀も政府の財政政策も人口知能に任せた方がよいということだ。
 人工知能なら単純で景気が悪化すれば、景気が完全によくなるまで景気刺激策を続け、景気が過熱すれば景気抑制策をする。ところが人間が財政・金融政策を行うと「財政規律」だの、「国の借金」だのに強く影響され身動きが取れなくなって、間違い続け、経済をどんどん悪化させてしまう。人工知能なら、経済の発展と人間の幸福を最大限追求するから、国民の満足度もアップし国の借金の問題もあっという間に解決してしまう。
細かい予算の配分は政治家(人間)が行えばよいが、少なくとも予算の総額と金融政策は人工知能が決めた方が良い。そろそろ、そのような人工知能の開発を始めたらどうか。貧乏になった日本を次世代に引き渡さないために。

小野盛司

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西部邁

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