やくざ国家・中共に日本はどう対峙すべきか(その3)

過去の記事はこちらをご覧ください。
・やくざ国家・中共に日本はどう対峙すべきか(その1)
http://asread.info/archives/3096
・やくざ国家・中共に日本はどう対峙すべきか(その2)
http://asread.info/archives/3162

 この一、二年の中国経済の激しい減速については、すでにいろいろな数字や現象によって明らかになっています。それは田村秀男氏の指摘するとおり、不動産や設備への過剰投資による供給過多、金融バブルの崩壊、二千兆円を超える企業債務、輸入額の極端な落ち込みなどに現れています。ちなみに二〇一五年のGDP成長率の公式発表が6.9%とされていますが、これはデタラメで、実際にはマイナス成長だろうというのは、中国経済に関心のある人ならだれでも気づいていることです。
 中国のGDP成長率公式発表がデタラメだというと、近年の中国が急速に発展しその経済規模が日本を抜いて世界第二位にまで達したと聞かされている読者はいぶかしく思われるかもしれません。まずは中国の経済統計はまったくあてにならないという話を少しだけしましょう。
 これは、当の首相である李克強氏がそう発言していて、当てになるのは、鉄道貨物輸送量と電力使用量だと暴露しているのです。これらは生産と流通の実態を示しますから、ごまかしが効きません。もう一つごまかしが効かないのは、外国が相手である貿易額です。
 さて評論家の石平氏がある会合で語ったところによれば、二〇一三年にはGDP成長率が7.5%、電力の成長率が7.7%と、それなりに釣り合っていたのですが、わずか二年後の二〇一五年には、鉄道0.5%、電力▲11.9%、貿易▲8%、輸入額はなんと▲14.2%だそうです。これでGDP成長率6.9%が達成できるわけがありません。
 中国経済がこれほどひどくなったのには、その構造的要因が関係しています。GDPを構成するのは主として投資と消費ですが、中国の場合、投資の割合が七割と、他国に比べて異常に高く、その分消費の割合が低いのです(日本は消費約六割、アメリカは約八割)。これは、民間需要がついてこれないのに、国営企業がやたら設備や不動産や生産財や耐久消費財を作りまくって、結局は一般庶民がそれを消化しきれずに、過剰な在庫を抱えてしまうことを意味しています。
 それでも何しろ巨大な人口を抱えていますから、成長期には需要はいくらでもあると考えられ、人件費が安いので商品価格も低く抑えられていました。需要が供給を上回っている(インフレギャップ)間は、それ作れや作れで実際に生産活動も盛んでしたが、ここに政府の市場経済に対する未熟な認識が災いしたのか、生産と消費のバランスについての大きな見込み違いが生じました。やたらと人民元を刷りまくり、際限なく財政出動をした結果、インフレが深刻化します。人件費は急速に上がり始め、商品価格も上昇、逆に貨幣価値が下がったので、資本は海外に逃避します。日本など外国資本がうまみを感じられなくなったため生産拠点を東南アジアなど外国に移し始めます。石平氏の語るところによれば、人件費は十年間で三倍に跳ね上がったそうです。
 また中国はもともと都市と農村の貧富の差が激しい国で、農村から都市への移動の自由も許されていません。上位一割が所得の九割を握っており、沿岸部に八割の資本が集中しているとも言われています。こういうアンバランスな社会構造の国を、単に広大な国土と巨大な人口を抱えているからという理由で「魅力的な市場だ」と考えるのは間違いです。ミクロレベルでは、大成功を収める人や企業も当然出てくるでしょうが。
 要するにこの数年間の中国は、高度成長、急激なインフレ、急激なデフレという景気の波を驚くほど短期間に経験したことになります。いま中国大陸のあちこちには「鬼城」と呼ばれる巨大なゴーストタウンがいくつも存在します。価格は下がっていますが、買い手がほとんどつきません。膨大な在庫は、ダンピングによって国内及び周辺の発展途上国向けに捌かれるほかはないでしょう。するとますます価格低下が起き、デフレの進行に歯止めがかからなくなります。原油価格がこれだけ下がるのも、中国の輸入の落ち込みが大きく影響していると言われています。

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西部邁

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