※この記事は月刊WiLL 2016年2月号に掲載されています。他の記事も読むにはコチラ
「大伯父の魂に会った」
平成二十七年八月十五日、私は台湾人女性と靖国神社にいた。
台湾南部の高雄の小学校で教師をするこの女性は、日本人は親切で正直、常に礼儀正しいといつも褒めてくれる、日本人である自分が恥ずかしくなるほどの日本贔屓である。
元総統の李登輝さんが日本の武士道を称賛すると、武士道など忘れてしまっている現代日本人は、日本精神をたっぷり身に付けたこの元日本人に接して恥ずかしい思いをする。これと同じ感覚だといえばお分かりだろうか。
私はツイッターで知り合ったのだが、たまたま日本を旅行していると知って、それなら一緒に昇殿参拝を、と声をかけたのだ。
案内して初めて、この女性の母方の大伯父が、日本兵として南方戦線で戦死していたことを知った。靖国神社には、大東亜戦争に従軍し、戦死した台湾籍約二万八千柱が祀られているが、大伯父はそのうちの一人だったのである。
靖国神社には過去に一度、参拝したことがあると言っていたが、昇殿参拝は初めてという。参拝の間中、彼女は神妙な面持ちだったが、参拝後、感極まった様子で「本日はお蔭さまで靖国参拝ができ、祖父のお兄さんの魂にお会いしました。目頭が熱くなり、涙が出ました」と勉強中という日本語で語ってくれた。
首相参拝を待っている
そんな彼女が日本のことでどうしても許せないと感じるのは、日本の政治家やメディアが、中国や韓国の歴史攻撃にろくに反論することなく、平気で日本を罵ることだという。「日本人は日本精神を忘れましたか。総理大臣の靖国参拝も、世界で反対しているのは中国、韓国だけなのに、なぜ遠慮するのか」と嘆く。
「不戦の誓い」という表現にも、大きな違和感を覚えるという。
「この言葉は、まるで何か悪いことをした子供が『もう二度としない』と後悔する表現のように聞こえる。台湾人はもう少し現実的です。私たちは戦争を望まないが、万が一、中国の人民解放軍が攻めてくれば反撃する」
安倍首相に対する信頼はことのほか厚い。首相就任後、台湾を「日本の大切な友人」と呼ぶなど、「台湾は台湾、中国の一部ではない」ということを行動で示しているからだ。中国に遠慮しないでという思いも募るようだ。
安倍首相は、靖国神社に平成二十五年暮れに参拝したあと、ピタリと行っていない。
どうなっているのかとヤキモキしていたところ、安倍首相の側近からこんな発言が聞こえてきた。
萩生田光一官房副長官が、新聞のインタビューでこう語っていたのである。
〈安倍晋三首相の靖国神社への思いも承知しているので、参拝が政治問題化しない時代をつくりたい気持ちがあります。ただ、さまざまな懸案を抱えており、そのことによって他の議題が停滞するのだとすれば、大きな判断で考えなければいけない〉(産経新聞、十一月二十四日)
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2コメント
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山際澄夫 様
台湾の女性と靖国神社へ昇殿参拝されたとのこと、そしてこの女性がおっしゃていることに本当にそうだと膝を打ちました。日本は中韓に対する配慮を、どれだけ台湾にしてきたのでしょうか。忸怩たる思いです。
靖国への昇殿参拝を誘う等、台湾の方々と親愛のこもったお付き合いをすることが真の国際親善であり、ひいては日本と台湾の安全保障につながるのではないかと思います。
山際様の記事が多くのメディアで多くの日本人の目に触れることを祈っています。
栃木県宇都宮市
坂田 卓(日本国籍)