近代を超克する(9)対デモクラシー[2] プラトンとアリストテレス

アリストテレスの『政治学』による制度の分類

 アリストテレス(BC384~BC322)は、古代ギリシャの哲学者です。プラトンの弟子であり、アテネに学校リュケイオンを開きました。アリストテレスの『政治学』は、プラトンの『国家』と並んで西欧政治学の必読書に挙げられます。アリストテレスの『政治学』では、国の制度が次の六つに分類されています。

(1)王制
・独りが共通な利益を目標にするもの。
(2)貴族制
・少数が公共の利益を目標にするもの。
・特徴は、徳。
(3)国制
・多数が共通な利益を目標にするもの。
(4)僭主制
・独りが自分の利益を目標にするもの。
(5)寡頭制
・少数が富裕者の利益を目標にするもの。
・特徴は、富。
(6)民主制
・多数が貧困者の利益を目標にするもの。
・特徴は、自由。

 王制・貴族制・国制が逸脱すると、公共に有益なものを目標とするものから、しないものへと変わります。つまり、次のような関係が成り立つというのです。

 (1)王制  →「逸脱」→(4)僭主制
 (2)貴族制 →「逸脱」→(5)寡頭制
 (3)国制  →「逸脱」→(6)民主制

 現在の制度から他の制度へ移り変わるとき、それは革命と呼ばれています。
 アリストテレスの意見で注目に値するのは、民主制の特徴が、大多数によって議決されたことが至高であることではないと考えられている点です。なぜなら、それは他の国の制度についても言えることだからです。寡頭制だろうが貴族制だろうが民主制だろうが、国民権に与かる人々の多数によって議決されたことは、至高だと見なされるというのです。この見解は、傾聴に値します。

アリストテレスの混合制について

 アリストテレスは、制度の混合についても言及しています。例えば、国の全組織については、民主制でもなく寡頭制でもなく、これらの中間のものが望ましいと語られています。ある人々の主張として、最善の国制はすべての制度から混合されていなければならないという意見も紹介されています。
 具体的にスパルタ(ラケダイモン)の国政では、王制が独裁制、元老支配が寡頭制、監督官あるいは共同食事などの日常生活が民主制として見出されることが紹介されています。また、アテナイのうまく混合した例として、評議員会が寡頭制的、役職が選挙されることが貴族制的、裁判所は民主制的だと紹介されています。
 アリストテレスは寡頭制と民主制との混合制度を考えた上で、民主制へ傾く場合は国制と呼ばれ、寡頭制へ傾く場合は貴族制と呼ばれるのが習いだと言います。その上で彼は、貴族制の真の意味での特徴は、徳にあることを主張するのです。

アリストテレスの貴族制評価

 国民権における平等の根拠として、アリストテレスは自由と富と徳の三つを挙げています。自由は貧乏な人々に、富は富裕な人々に、徳は貴族に関係しています。貧乏な人々と富裕な人々との混合が国制であり、そこに徳が加わったものが貴族制だとされています。つまり、貴族制は最も優れた人々の支配であり、指導的である人々が政治的な徳によって想定されているのです。
 アリストテレスの言う最善の生活とは、個人においても国においても、外的善を備えた徳と結びついた生活なのです。そのため、彼の言う意味での徳を特徴とする貴族制が高く評価されているのです。

アリストテレスによる民衆制批判

 アリストテレスは、国民のすべてが全てのことを評議することは民主制的だと述べています。なぜなら、民衆は平等を求めるからです。
 彼は民主制に批判的です。例えば、民主制では役人たちを非難する人々を民衆が決定するため、役人たちの威信はことごとく失墜すると語られています。
 また、多数者に主権があることと自由であることの間における弊害についても指摘があります。等しさを根拠とし、大衆によって決定されることが権威をもつことと、自由を根拠とし、好むことを為すことには相違があるからです。
 民主制では節度のある生活ではなく、大衆は欲するままの無秩序な生活を楽しむようになると考えられています。そして、それはアリストテレスが言うように、よろしくはないのです。


※第10回「近代を超克する(10)対デモクラシー[3] ポリュビオスとキケロ」はコチラ
※本連載の一覧はコチラをご覧ください。

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西部邁

木下元文

木下元文

投稿者プロフィール

1981年生。会社員。
立命館大学 情報システム学専攻(修士課程)卒業。
日本思想とか哲学とか好きです。ジャンルを問わず論じていきます。
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