【世代論特集】団塊世代が行った言論上の親殺し

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→ 【激論!酒鬼薔薇世代】私たちはキレる世代だったのか。

「Tおじさん」と呼ばれた三人目の祖父

 私には三人の祖父がいる。母方の祖父は子供に恵まれず、祖父の従兄弟の三女を養子として迎え入れた。養子となった女児は成人し、見合い結婚をして二人の男児を授かる。その二人のうち一人が私である。祖父の従兄弟は私にとって生物学上の祖父にあたる。今回はその三人目の祖父の話である。
 よくある話だとは思うが、少々複雑な関係性である。両親は私が子供時分にはその生物学上の祖父のことを、下の名前で「Tおじさん」と呼ばせていた。祖父の世代は、Tおじさんの他にも多くの親戚がいた為か、私はこのことに特に疑問を持たずに育った。Tおじさんの正体を知るのはずっと時代が下り私が二十歳を少々過ぎたころである。

成人式の手紙

 Tおじさんには、お年玉やら何やらお小遣いをよく頂戴した。Tおじさんは筆まめであった。幼少時から、頂戴する金子の袋には必ず手紙が添えられていた。幼少時の手紙はもうないが、成人してからの手紙は全て手元に残っている。最も古いものは、成人式に頂戴したものだ。以下にそのまま掲載させて頂く。

成人お目出度う。心よりお祝い申し上げます。
お父うさん、お母さん、お祖父ちゃんもさぞ、感慨一潮のことと思います。
これからは社会からも一人前の人と遇してもらい、自身の言動にも責任を持つて母校の校訓にもありますよう、「先づ落着いて
何事も几帳面に眞剣に」をモツトーに行動するよう頑張つて下さい。
本年は一五二万もの青年が新成人となるようですが、将来の日本社会の担い手として、国家有為の材として大学生活を両親に
感謝しつゝエンジヨイし将来に備へて下さい。
成人式を迎へるに当り、日本の憲法に目を向けて、特に九条と一九条に心して下さい。(ご承知かも・・・)
別紙に抜粋しました。
同封の金子、お祝のお印まで。

憲法第九条
日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段として、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。

第一九条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

 本文については、奇をてらうものではなく孫を想う優しさと思いやりに溢れた文章であり、私にとって大切な宝物になっている。手紙を頂戴した当時は、使用していた便箋が「この一票 任せて悔の ない人へ」という標語が印字されたもので有った為、選挙権を持てたことを暗示するなかなか洒落の利いた手紙だ、などと暢気に考えていた。しかし今読み返してみると、当時は読み流していた憲法抜粋部分にやはり引っ掛るものを感じるのである。しかもよりによって、所謂保守派からは評判の悪い九条と、一九条を、敢えて取り上げていることに。
 Tおじさんは既に鬼籍に入ってしまった。今や直接真意を知ることはできないので、次章で私なりに考えうる可能性を模索する為、とある作家氏へのインタビュー記事を参考にしながら考察を進める。

沈黙し、忘れられた大正世代

 ノンフィクション作家で、「太平洋戦争・最後の証言」三部作の著者、門田隆将氏は、雑誌正論の二〇一二年九月号のインタビュー記事で、当該三部作の執筆にあたり大正世代の百数十人の方々から得た証言から、彼らの功績と、その子供にあたる団塊世代の罪について語っている。

(前略)大正生まれの人たちは、他人のために生きた世代です。家族や同胞を守るために戦い、戦後はコツコツと、黙々と働き続けて日本を復興させ、高度経済成長を成し遂げた。そんな男たちを貶めて、彼らが歩んだ歴史を軽んじてきた。(中略)

-なぜ大正世代の生きざまは忘れられたのでしょう
門田:それが戦争に負けるということなのかもしれません。敗戦で日本人の価値観が変えられてしまい、大正生まれの人たちが親から受け継いだことを、子供たちに継承させられなかった。彼らの子どもの団塊の世代は、反権力、反国家、反権威の全共闘世代となり、「親父は古い」と大正世代の生きざまの継承を拒否した。団塊の世代の罪は大きいと思いますね。

-大正世代の人たち自身も、語ろうとしなかった印象があります
門田:語らせてもらえなかったし、語ることもできなかったんだと思います。大和の主砲にいた滝本保男さんという人を今回取材しましたが、彼もこれまで戦争については話したことがなかったそうです。息子さんは「なんでおまえだけ生き残ったのか」と言われた経験があるからではないかと想像していました。死んだ乗組員の遺族に最期の様子を伝えに行き、感情的な言葉を浴びせられたそうです。しかも敗戦した途端に、世の中は、自分たちの存在自体を悪であるかのように否定し始めた。そうやって、大正生まれの人たちは戦争を語らなくなったんです。(後略)

 私がこのお考えに付け足すことは何もなく、大いに賛同する。寧ろ、幼少時にこのインタビュー記事の印象を補強するような体験をしていたことを、ぼんやりと思い出すことができた。
 その席には、私の戸籍上の祖父と生物学上の祖父及び私の両親と、私がいた。ふとした会話の流れから、話題が戦争の話になったように記憶している。私が無邪気に戦争の経験を訪ねたとき、両祖父は憚りの表情を浮かべ一瞬の沈黙をおいた。その後である。「我々は武漢三鎮でね・・・」と語り出そうとするのを、母親がたしなめたのだ。やめてよ、お父(義父)さん。
 それきりその話題は宙ぶらりんになり、別の話題が気まずい沈黙を埋めたように記憶している。私も子供ながらに戦争の話をすることはいけないことなのだ、と感じそれ以降その話題を出すことは遂になかった。門田氏が語る大正世代の否定を、私は確かに見ていたのだった。
 大正世代は、若者の時期には国家から沈黙を強いられた。成人した後は、自らも憚りを感じる戦争での体験を、ようやく小さな声で語り始めようとするのを子供の世代によって口封じをされてきた。ただ黙々と働き続けた。結論を急ぐようだが、祖父が孫への手紙に忍ばせた憲法条文の抜粋で語りたかったことは、自身が一貫して沈黙させられてきたこと、その原因には戦争があるということであったように感じている。

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西部邁

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コメント

    • ろっく
    • 2014年 7月 25日

    物語を紡ぐとはどういうことでしょうか?
    歴史的なつながりを獲得するということなのかなと読んでいて感じました。もっと他に意味がありますか?

      • 小菅 拘一
      • 2014年 8月 18日

      ろっく様

      ご意見頂戴し誠に有難うございます。
      物語を紡ぐとは、まずはろっく様のご指摘の通り、歴史的なつながりを獲得することにあります。ただ、つながりを獲得した後には、我々がどのように生きるのかという問いが立ち現われるのだと考えております。注意を要するのは、昨今輻輳している懐古趣味的方法には、言葉は悪いですが、「昔は良かったね。終わり。」で済ませ、それを自らの生に活かすことがないのではないか、と感じております
      。懐古趣味的言説には、悲劇的要素が少ないと考えており、それだけでは我々の生へのつながりは獲得し得ないのではないかと考えている次第です。

      まだまだ試行錯誤中であります。色々とご指導賜りますと幸いです。

    • 単純に
    • 2015年 1月 07日

    戦争に行って人を殺した、または親友を亡くした、部下を見殺しにした、上官を死なせてしまった、あらゆる自責の念からも他人に話したいものではないでしょうね。そもそも理解できるような話でもない。貴方なら自分の息子に人を殺した話を英雄譚のように話せますか?その裏側にある紛れもない事実である殺人を誤魔化して。息子からこう聞かれたら?【何で人を殺したの?】国の為にといいますか?息子はこう思うかもしれませんね【国の為なら人を殺していいんだ】どんな言い訳をしたところで正当化はできません。だから黙殺されたんではなく自責の念と共に封じたが、正解でしょうにやな。

    • 単純に
    • 2015年 1月 07日

    まぁ仮に貴方が正当防衛にしろ殺人を犯して、それを自分の子供たちに自責の念もなく嬉々として話せるような人間ならいいですけどね。戦争に行って地獄で生き残る為に人を殺しまくって、それを何も知らない子供たちや嫁さんに帰って語るなんて狂気でしょ(笑)殴り合いでも自己嫌悪に陥りません?相手が泣いて叫んでお母さん、お母さん、お母さん助けてと許しを乞いても極限まで殴りつけたとしたら。それでも許さず最後には殺すのが戦争ですよ。貴方の世代に絶対的に足りないものは痛みでしょうね。バカな世代が戦争ができる国にしないように切に祈りますよ(笑)

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