フラッシュバック 90s【Report.28】男女平等社会・家事の外注化が進んだ90年代の結果は保育所難民?

子育て・家事の外注が始まった90年代以降

わかりやすくいえば、家庭における家事や子育ての外注化が始まったのです。

例えば、90年代後半ごろから表れ始めた言葉として、「中食」や「デパ地下」があります。これらの言葉からイメージされる消費スタイルは仕事を終えた女性が、家の食事として持ち帰るために惣菜などを買って帰り、家庭で食事を取る感じです。

この背景には、それまで自宅で食事を作っていた主婦の負担部分を事業者が負担するといった形です。もちろん、それは無料ではなく、有料なわけですが、働いている方々からすれば、必要経費といえるでしょう。

同じ発想で子育ても外注化しようということから、保育所の待機児童の解消が問題として挙げられてきました。もしかすると、モンスターペアレントという現象も、子育ての外注化に伴った同じ現象だったのかもしれません。

外注ばかり使う会社のビジネスの大事なところ

さて、あえて「外注」という言葉を使ったのは、ビジネス目線で話を進めたいからです。

ビジネスモデルで見た際、外注ばかりを使う会社といえば、商社が真っ先に浮かびますね。一昔前まで、商社はビジネスチャンスを探してきて、そのビジネスを協力するパートナーを見つけて、共に利益を上げて、その収益から手間賃をもらうというものです。

今は、商社も旧来のビジネス斡旋ではなく、付加価値をつけることを求められていますが、そこは置いておきましょう。

家庭が家事を外注する「商社」になったと仮定するのであれば、大事なのは外注したことへの評価は家庭が下すことです。しかし、それが一番難しいところでもあります。

評価を下すことの難しさ

例えば、子育てに関して考えてみましょう。

1人の子どもの子育ての評価を下すのをいつにするかというのは非常に難しいわけです。ある意味、私にしたところで、親からすればまだ、子育ての評価など下っていないでしょう。しかし、親になった以上はどこかの段階で決断を行い、評価を細かく下していく必要があります。

そして、子育てを外注化してしまうことの難しさは特にこのあたりにあります。子どもの様子がおかしいのも体調が悪いのか、それとも身近にいる人間の影響を受けているのか。そもそも、今通っている保育所や塾がNGなのではないかなどなど。
この点、子育てで子どもをしっかり見ることができていれば、様子の変化の要因も推測が着きやすいです。ただ、過干渉になってしまう危険性もなきにしもあらずですが。

しかし、こういう評価を下すことをあきらめて思考停止に陥ると前段にあげたように、ただ単に「外注が悪い」という短絡的な表現に陥ってしまいます。

うやむやにされる「責任者は誰なのか?」問題

この論を読み進めると、「家庭の問題はやはり家庭で。」という結論に陥りそうですが、現実的な解決策ではありません。

というのも、もはや私たちが想定している理想的な「家庭」が社会には存在していないのかもしれません。

仮に、父親が土日休みで安定した会社勤め、母親が専業主婦で子ども2~3人といった家庭が戦後における理想的なモデルとされてきたのであれば、90年代以降、そのモデルが崩壊していくことがトレンドだったわけです。

モデルが崩れていく中で、そのモデルに戻ることを今の家庭に求めたところで、家庭は体裁を整えるために、「外注」を繰り返すことになるでしょう。

そうして、「責任者は誰なのか?」ということはうやむやにされていくわけです。


※第29回「フラッシュバック 90s【Report.29】核兵器に思考停止してきた純粋国家・日本」はコチラ
※本連載の一覧はコチラをご覧ください。

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西部邁

神田 錦之介

投稿者プロフィール

京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。
大切なことを伝えることとエンターテイメントは両立すると信じ、「ワクワクして、ためになる」文章をお送りします。

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