フラッシュバック、90s。【Report.39】90年代に残したロシア外交のツケ

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「フラッシュバック 90s」特集ページ

私も来年で三十となりますが、ここ15年の世界状況の激変を肌で感じると同時に、日本外交の後手後手感も肌で感じます。

ただ、外交の失敗は行政府の責任もありますが、往々にして国内の政治が足を引っ張っていきました。今は、選挙に勝てる戦後最強といってもよい安倍首相が君臨しているため、衆議院・参議院ともに自民党が多数を占め、党内もポスト安倍狙う動きで収まっています。

しかし、この一枚岩が生まれたのが、世界中が引き金に指をかけてすくんでいる国際情勢の時代というのが皮肉でなりません。特に、平和条約の話が現実味を帯びてきたロシア外交においては、90年代初頭、より日本に明確かつ有利に平和条約を結べていた時期がありました。

その時代に、今のような国内情勢であれば、2000年代以降の執事も歴史も変わっていなかったかもしれません。

冷戦下における操作された高度経済成長

ご存知のとおり、90年代は冷戦が終わった時から始まります。社会主義陣営の東側と資本主義陣営の西側諸国という核兵器の軍拡競争も含めた高度な緊張関係がサンフランシスコ平和条約以降、続けられてきました。

日本はその点で世界戦略的にも重要な位置にありました。アジア大陸の東側は、ソビエト連邦と中国共産党という東側の大国が位置していました。

そのため、世界戦略として、米国は対日政策を大きく変換し、経済的に強い国へと変貌を遂げさせることを目標とした。

東京大学名誉教授の下記記事に詳しい。
冷戦後の日本の政治 三谷太一郎・東京大学名誉教授講演

一部抜粋する

ケナンは日本の経済復興が実現し、沖縄をはじめ太平洋諸島に沿った米軍の基地網によって日本の安全が保障されている限り、ソ連の対日侵攻の可能性は低く、日本本土に大規模な軍事力を維持することは必要ないという見解を持っていた。これが憲法第9条と安保を両立させる米国の対日政策の基本方針であった。

つまり、冷戦下における日本のグランドビジョンは太平洋の向こう側、DCのペンタゴンが描いていたということになる。

冷戦終幕とアメリカとの距離感

冷戦の終焉後、資本主義陣営の国々はアメリカに政治的かつ資本的に従属していたため、グローバリズムの名のもとに広がるアメリカニズムに染まるか否かを迫られた。
奇しくも、イラン・イラク戦争時にはアメリカの支援を受けていたイラクがアメリカを中心とする多国籍軍による攻撃に晒された。

ヨーロッパは経済統合を目指した動きが始まり、ロシア、中国は外貨先導による改革路線へと切り替えていく中、日本は独自路線を取ることなく、「リトル・アメリカ」となる道を選んだ。

先日の表現者塾の講演会で、西部邁氏が「平成の世はまさに、右も左も構造改革と叫んだ時代だった」という旨を語っていたが、90年代、つまり平成の始まりはまさしく、「リトル・アメリカ」としての歩みをグランドビジョンとしてきたといえる。

リトル・アメリカの象徴・日米構造協議

本サイトでもお馴染みの、関岡英之氏の名著、「拒否できない日本」がすっぱ抜いている日米構造協議および年次改革要望書は90年代の間、日本が星条旗に染まっていく様子をありありと描いています。

この間、日本の最も強みであった経済力はペンタゴンの意図を組み、次々とアメリカニズムに染まっていきました。

下記のサイトに詳しいので参考にしていただければと思います。
http://www.geocities.jp/sundayvoyager/sii_japan_america.html

リトル・アメリカのロシア外交

90年代、ソ連が崩壊し、経済的に困窮するロシアに対して、日本は直接投資という形で借りを作ることもできたし、そこで、平和条約と四島返還の決着を条文で行うことも可能だったはずでした。
確かに、タフな交渉かもしれませんでしたが、今のように愛国主義の復活しているプーチン政権と比べれば月とスッポンだったでしょう。

ですが、日本は対ロシアという意味では、独自路線を踏んだとは全く言えません。それどころか、冷戦崩壊のあおりで90年代初頭に起こった55年体制崩壊(これも選挙区制度変更という政権与党の失策から生まれたことですが)による混乱や上にもあげたアメリカによる経済的圧力もあり、官僚が手間を取られていたのでしょう。

官僚が政治家の無駄な書類作りに手間取られて忙殺され、当の政治家の多くは選挙対策と人気取りに終始するという構図は今も続いています。

90年代のロシア外交から学ぶこと。

90年代のロシアが提案してきた領土割譲案は、歯舞・色丹の返還交渉と択捉・国後の帰属交渉でした。
領土的には、択捉と国後が北方領土の90%を占めているところから、日本は名前としての北方領土をロシアは実利としての北方領土を獲得する案でした。
おそらく、この案は戦後国交回復前に、稀代の政治家である重光葵氏が交渉を繰り返す中で、最後に2島返還で手を打つことを鳩山氏に打診したことからも、ロシア側は戦後一貫して、返還は2島という姿勢を崩していません。
重光氏が諦めた提案が90年代に再度答え合わせのようにロシア側が提示してきている。そして、今回はいったいどんな結末になるのか。

少なくとも90年代並みの提案が出なければ、ロシアは譲歩可能性を国内事情にかまけて提案していると言えるだろう。

日本の民間インテリジェンスたちの踏ん張りどころである。


※本連載の一覧はコチラをご覧ください。

西部邁

神田 錦之介

投稿者プロフィール

京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。
大切なことを伝えることとエンターテイメントは両立すると信じ、「ワクワクして、ためになる」文章をお送りします。

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